自動車メーカーはソフトウェア定義型自動車(SDV)の開発に多額を投じているが、今は高価な第5世代移動通信(5G)用のモジュールをいつ導入するかという新たな投資判断を迫られている。
◇リスク分散
ウォールストリート・ジャーナルによると、自動車はインフォテインメント、ナビゲーション、診断、ロードサイドアシスタンス(路上での緊急対応)、先進運転支援システム(ADAS)のトレーニングといったコネクテッド機能を携帯電話通信網に依存しており、車載ソフトの無線アップデートで携帯通信を使うこともある。
自動車メーカーは4G(LTE)通信から5Gへ移行することでより高速なデータ通信が可能になり、将来の4G通信網の終了に備えることもできる。SBDオートモーティブの北米担当ディレクターは「高速な情報転送を必要とするクラウドベースのゲームなどで5Gが必要になる可能性があるうえ、リスク懸念が拡大する10年期に入ってきたため、5Gへの移行は4G終了に伴うリスクの軽減にもつながる」としている。
◇2倍のコスト
S&Pグローバルモビリティーによると、24年に米国で販売された自動車で5G機能を搭載しているのは47車種のみ。膨大なデータ処理を通じて最新機能を提供したいと考えるBMW、GM、フォード、ポールスター、ポルシェ、ビンファスト、ボルボなどが、コネクテッドカー機能への長期的なアクセス確保のために資金を投じている。
5Gモジュールの価格は150~210ドルと4Gの約2倍で、すでにEVや自動運転技術に多額を投じている自動車メーカーはほとんどの車種で5Gの導入を先送りしている。アナリストや専門家は、4Gネットワークが30年代半ば~後半まで運用されると見ている。また、通信速度が遅い4Gは、コストがかかるデータ通信の阻害要因にもなるため、自動車メーカーは結果的にモジュールとデータ転送の両方のコストを節約している。
◇通信会社への依存度が上昇
4Gだけでも車載通信の対応や修正は可能かもしれないが、SDVの基本的な概念は、ハードウェアの制限に影響されない統合された円滑なユーザー体験であり、真の柔軟性にある。機能のアップデートに個別の接続やディーラー訪問が必要では、そのビジョンは達成されない。
自動車メーカーが本当に避けたいのはハードウェア老朽化のリスクで、車の保証期間内にこれが発生すると、高価なモジュール交換やハードウェア更新を無償で提供する必要が生じる。消費者にとっては、保証期間後に5Gに接続できなくなれば車を処分するか、携帯電話と接続できない車に乗り続けることになる。
自動車メーカーが提供する新しい車両機能やサービスの多くはネットワーク接続なしでは機能しないため、5Gへの投資判断はネットワーク事業者への依存が高まる自動車業界にとって当然の悩みであり、自動車業界と通信業界のパートナーシップの重要性を認識する機会といえる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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