高級ブランドら、ビットコイン高騰を受けて暗号通貨での決済を受け付け 〜 暗号資産家市場の掘り起こしに舵を切る

最近におけるビットコインの高騰は、高級ファッション・ブランドや小売会社らの注目を集めている。ビットコイン価格は12月16日に10万7000ドルを超えて、新たな史上最高値をつけた。ロイターによると、高級ブランドらは、暗号投資家のブランド忠誠心(loyalty)を醸成すべく、消費者の支払い手段として暗号通貨を受け付ける動きを強めている。

▽フランスの高級百貨店、バイナンスおよびリジと提携

最近までは、LVMH(Moët Hennessy Louis Vuitton)の時計ブランドであるウブロ(Hublot)やタグ・ホイヤー(Tag Heuer)、ケリング(Kering)傘下のファッション・ブランドであるグッチ(Gucci)やバレンシアガ(Balenciaga)といったほんの一部の高級ブランドだけが暗号通貨による決済を実験的に導入していた。

しかし、ここ数週間に、フランスの高級百貨店プランタン(Printemps)が、世界最大の暗号取り引き所バイナンス(Binance)およびフランスの金融技術会社リジ(Lyzi)と提携し、フランス内店舗でビットコインやイーサリアムを含む主要暗号通貨での代金支払いを受け入れると発表した。

バイナンス・フランスのダヴィッド・プリンセイ社長は、「かなりの数の問い合わせがあった」と話す。

▽STデュポンら、ビットコインでの支払い受け付けを開始

高級ライターとペンのメーカーであるSTデュポン(S.T. Dupont)は、パリの2店舗で暗号通貨決済を受け入れることを目指す、とロイターに語った。

レジャー業界では、クルーズ会社のヴァージン・ヴォイェジス(Virgin Voyages)が最近、利用客らの支払い方法選択肢にビットコインを含める初の商品を提供し始めた。

▽トランプ次期政権の暗号歓迎路線があと押し

規制当局は、ビットコインに代表される暗号通貨について、リスクが高く、現実世界での用途が限定的だ、と何年も前から警告してきた。実際、暗号通貨の変動幅はきわめて大きいため、決済手段として広く採用されることはこれまでなかった。

しかし、暗号通貨にもともと親和的なドナルド・トランプ次期米大統領が選挙戦中も当選後もその路線をあらためて明示したことで、ビットコインの記録的上昇に拍車がかかっている。

高級ブランドらはむかしから、シリコン・バレーの高級ショッピング・モールに出店したり、エルメス(Hermes)がアップル(Apple)との共同ブランディングとしてアップル・ウォッチを発売したりと、技術業界や技術製品愛好家の富裕層市場の開拓に熱心だ。

▽革新的なブランドであることを暗号資産家らに訴求

高級品業界がここ数年で最大の低迷に直面し、新たな成長源を模索しているいま、高級ブランドらは、ビットコインの高騰が生み出す新たな富、つまり暗号通貨資産家らを高級品需要掘り起こしの商機として位置づけている。

S&Pグローバル・レーティングスのデジタル資産主席分析家アンドリュー・オニール氏は、ブランドらが暗号通貨による支払いを受け付ける動きについて、「団塊の世代にしか売れない堅苦しい古臭いブランド」ではなく革新的なブランドであることを、「暗号通貨投資によって出現した富裕層に訴求する手段になりえる」と指摘する。

▽バレンシアガ、暗号資産家向けハードウェアを発売

バレンシアガは最近、暗号財布会社レッジャー(Ledger)のハードウェア製品「スタックス(Stax)」を収納するための革製カード・ホルダーを発表した。350ユーロ(368ドル)で販売される黒皮のそのアクセサリーには、キーホルダーとエッフェル塔のチャームが付属し、ブランド・ロゴの下にはNFC(Near Field Communication)チップが内蔵されている。

レッジャーのスタックス・クリプト・ハードウェアは、湾曲した指触操作画面を備えた高級機器で、ベスト・バイ(Best Buy)で399ドルで発売されたばかりだ。

▽「様子を見る」のではなく「試験して学ぶ」ことが重要

ケリングの最高顧客&デジタル責任者グレゴリー・ブッテ氏は、暗号通貨やそのほかの台頭技術に関する戦略について、「様子を見る」のではなく、「試験して学ぶ 」と話している。検討しているあいだに取り残され市場競争に勝てなくなるためだ。「若い顧客やアジアの顧客を獲得するカギとして、新しい技術を取り入れることがこれからさらに重要になる」と同氏は話している。

ケリングの稼ぎ頭ブランドであるグッチは、2022年以来、米国内のほとんどの商品において、10種類の暗号通貨による購入を可能にしている。

ビットコインが前回に高騰した2021年後半当時、LVMHの大御所フレデリック・アルノー氏が社長を務めていたタグ・ホイヤーやグッチは暗号通貨での決済受け付けを検討し、その翌年には、米国内での一部の買い物について暗号通貨での支払いを受け入れた。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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