ロサンゼルスで続く不法移民摘発に対する抗議デモでは、ウェイモの自動運転タクシー(ロボタクシー)が暴徒化した集団の標的にされ、8日には5台が破壊された。車両メーカーやロボタクシー運営会社にとって、街中の人々が緊張状態にある時に無人の自動運転車(AV)をどう動かすかも新たな課題となっている。
◇危険区域はサービス停止
オートモーティブ・ニュースによると、トランプ大統領の移民政策強化をきっかけに起きた今回の抗議デモでは、暴徒化した参加者らがウェイモの車体に落書きをし、窓やフロントガラスを叩き割る様子が報道で伝えられ、車に放火する様子も確認されている。ロサンゼルス・タイムズによると、8日には少なくとも1台が即席の火炎放射器のような装置で焼かれた。
これを受けてウェイモは9日、混乱が続く一帯でのロボタクシーサービスを一時停止したが、市内のほかの地域ではサービスを継続しており、ロサンゼルス市警と協力しながら運行すべき地域を判断している。
同社のロボタクシーが破壊行為の的になったのは今回が初めてではない。2024年2月にはサンフランシスコのチャイナタウンで、中国の春節(旧正月)でにぎわう道路に停止した車両が襲撃、放火される事件があった。
◇車は異常を認知すべき
「春節事件」以後は、乱暴な人々が集まる地域をどう回避するかがAV業界の新しい課題になった。カリフォルニア大学バークリー校交通研究所のエンジニア、スティーブン・シュラドバー氏は「自動運転システムは、危険な場所に近づいた時『通常の状況ではない。進んではいけない』と認識できるようになるべき」と指摘した。
ロボタクシーサービスが始まった当初は、無人のAVが緊急車両の出動現場に乗り入れたり消防や救急の作業を妨害したりする問題が複数あり、ウェイモやゼネラル・モーターズ(GM)傘下クルーズ(今はAV運行を停止)は警察や消防と協力して、問題が起きた地域を避ける方法を探した。
ウェイモの場合、ロサンゼルスではまだサービスを始めたばかりで、日常的に緊急対応機関とどう連絡を取り合っているかは不明だが、シュラドバー氏は、車に搭載されたセンサーや、法執行当局との調整によって同社が「こうした状況のほとんどを回避できるはず」と見ている。
◇貴重な交通手段にも
一方、今回は危険な状況が生まれてもサービスを続けたウェイモを称賛する声もある。サウスカロライナ大学でAV関連の法律や安全に関する問題を専門とするブライアント・ウォーカー・スミス教授は「ロボタクシーはインフラであり、それに依存する人々がいる。人間の運転手がそのような地域を避けたがる状況では、車を持たない住民や労働者にとって貴重な交通手段になり得る」と述べた。
ウェイモは18年12月、アリゾナ州フェニックス都市圏でロボタクシーの有料サービスを開始。24年11月にはロサンゼルスでも営業を始め、2月に区域を拡大して、現在はロサンゼルス郡の89平方マイルにわたってサービスを提供している。米国の4大市場全体では1500台を超える同社のロボタクシーが公道を走っている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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