H-1Bビザ申請手数料引き上げで新興企業らが最大の被害に 〜 技術人材確保がさらに困難に、競争力弱体化に直面か

CNBCによると、ドナルド・トランプ大統領がH-1Bビザ(特殊技能職就業査証)申請に10万ドルの手数料を課す方針を打ち出したことで、米国の新興企業業界に深刻な悪影響がおよぶという懸念が、起業家や創設者、ベンチャー・キャピタリストたちから噴出している。

▽「到底負担できない額」「人材採用戦略が複雑化」

H-1Bビザは、技術や医療、工学といった専門職に就く外国人労働者を一時的に雇用できる制度だ。年間発給枠に上限があり、技術大手らが数千人単位の外国人技術者らを雇うことから、新興企業にとってはH-1Bビザの技術者を獲得することはもともと困難だった。

人材資源管理や給与、採用の技術プラットフォームを展開するワークストリーム(Workstream)のデズモンド・リムCEOによると、同社のH-1Bビザ申請は過去11年間にすべて却下された。

「新興企業にとって一人一人の採用はきわめて貴重だ。H-1B申請は費用も時間もかかるため、われわれはもっとも優秀な人材だけを選んでいる」とリム氏は話す。しかし、その申請手数料が10万ドルに跳ね上がったいま、「それは到底負担できない額」であり、「人材採用戦略が複雑化する」と同氏は話した。

▽大企業が見過ごした「原石」の発見も望めない

移民関連の助言を提供するサンフランシスコ拠点の法務技術新興企業アルマ(Alma)は、ホワイトハウスの発表以降、問い合わせが100倍に急増したという。

同社の創設者アイザダ・マラット氏は、「多くの新興企業では10万ドルという手数料を負担できない」「給与面でも大企業らと競争できない」ため、人材確保がますます厳しくなり、革新力や競争力の弱体化に直面するだろう、と不安を強める。

H-1B人材をこれまで採用してきたマラット氏は、外国人技術者を採用できない分、国内でその需要を満たせるほどの供給(コンピューター関連学部の卒業生数)があるかどうかが課題だ」と指摘する。

新興企業らは、大企業が見過ごした「原石」を発掘することで競争力を強化しているが、それが望めない状況になった、と同氏は指摘する。

▽人材だけでなく投資もカナダや欧州に流出か

フルエント・ベンチャースのアレギザンダー・ラザロ氏は、トランプ大統領による手数料引き上げが初期段階の新興企業らに「過度の負担をあたえる」と指摘する。

ワシントンDCの政策研究団体「情報技術&革新財団(Information Technology and Innovation Foundation)」のロバート・D・アトキンソン氏も、少数の外国技術者が新興企業の将来を左右することが多く、外国人材が国外市場の開拓にもつながるという利点もあると指摘する。

2020年の調査では、H-1B人材を採用する新興企業ほど外部資金調達やIPO、買収、技術革新の確率が高いことが示されている。トランプ大統領は、H-1B申請手数料を10万ドルに激増させることで米国人の雇用機会を拡大できると考えたのだろうが、「英国やカナダ、欧州に投資を流出させる可能性を高めるだけ」とクロスブリッジ・キャピタルの最高投資責任者マニーシュ・シン氏は述べた。

▽米国離れが進む可能性

欧州ではこれまで、優秀な人材が米国へ流出する「ブレイン・ドレイン(brain-drain)」が課題となっていた。しかし、トランプ政権による今回の手数料引き上げは米国離れを助長し、米国への移住や就職への機会を閉ざされた人材や、米国行きを考え直す高度技能人材を獲得できる転機となる可能性をもたらすと期待される。

欧州有数のベンチャー・キャピタル会社オクトパス・ベンチャースの人材責任者ローラ・ウィルミング氏は、「これまで米国が当然の目的地とみなされていたが、いまや英国や欧州でキャリアを築くことを真剣に検討する動きがすでに広がりつつある」と述べた。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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