ガス漏れ場所を正確に探知 〜ピカロ、ボストンだけで3356ヵ所を発見
- 2013年8月21日
- 環境ビジネス
パイプラインや地下のガス管のガス漏れ部分を正確に探知できる技術の開発が進んでいる。天然ガスの主成分であるメタンは、大気中に放出されると地球温暖化の大きな要因となるため、ガス漏れを最小限に抑えることが環境保護につながる。
ニューヨーク・タイムズによると、天然ガスは環境に優しく安全だとうたわれているが、知らないうちに大気中に漏れ出すことも多く、それが環境面の利点や気候変動の抑止効果を弱めている。
環境保護庁(EPA)によると、メタン1ポンドがもたらす100年間の温室効果作用は二酸化炭素(CO2)の325倍。また、ガス漏れは爆発事故につながることもあり、2010年にはカリフォルニア州サンブルーノでパシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)のパイプラインから漏れたガスが爆発して8人が死亡している。
大気への天然ガス放出は、沼地や下水から自然発生する場合と、ガス井やパイプラインから漏れ出る人為的原因の二つに大別される。また、フラッキング(水圧破砕法)の導入による天然ガス生産量の増加を受けて、漏れ出す量の拡大が懸念されている。
計測機器開発企業ピカロ(Picarro、カリフォルニア州)の最新ガス探知機は、ガス漏れが採掘施設で起きているのか、あるいは沼やごみ埋立場、下水から自然発生しているのかを判断する機能で注目されている。
その探知機の最大の特徴は持ち運べることで、2011年には車のトランクにそれを装着し、ボストン市内の地下を走る古いガス管網を対象に実演した結果、3356ヵ所のメタン漏れを発見した。
ピカロの探知機の最重要部分は、両端に鏡が置かれ、その間をレーザー光線が高速で往復している検査室になっている。取り込んだ大気をそこに送って正確なメタン量を測定する仕組みだ。車に搭載する場合、屋根部分に風力計と衛星利用測位システム(GPS)を設置し、車載コンピュータを使って各地のメタン量を高度も含めた三次元グラフで表わし、漏れの発生源やその規模を算出する。
メタンに含まれる炭素原子は、採掘施設のガスと埋立場または下水のガスでは異なるため、その比率を調べることでガスの発生源も分かる。
「この探知機の優れた点は、公道から私有地のガス漏れを発見できること」とピカロのマイケル・ウォーク最高経営責任者(CEO)は話す。
同社の探知機を6台購入し、担当社員の研修を始めたPG&Eでは、「ガス漏れ検査の作業を大きく変えるシステム」と高く評価している。
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