ブラックベリーのスマートフォンに価値はなし 〜 身売り模索に厳しい評価

 経営再建を目指すブラックベリー(BlackBerry)の経営陣は、身売りや事業売却を視野に入れた抜本的改革を模索しているが、同社のスマートフォン自体にはほとんど価値がないという厳しい評価が下されている。

 ロイター通信およびコンピュータワールドによると、ブラックベリー(カナダのオンタリオ州ウォータールー拠点)の買収に興味を示す私企業投資会社はいくつかあるものの、それらが関心を抱いているのは、ブラックベリーが刷新したOSのBB10と同社が保有する特許の一部で、スマートフォンの開発および製造事業には関心がない、と関係筋が明らかにした。

 ブラックベリーの10%を所有するフェアファックス・ファイナンシャル・ホールディングス(カナダのトロント拠点)は取材を拒否したが、ブラックベリーは私企業化(非上場化)するためにカナダの投資ファンドに打診したと伝えられる。

 ブラックベリーは、2006年までの6〜7年間に、企業向けスマートフォンと安全かつ独自の携帯通信管理システムによって、金融業界を中心に世界の企業市場を席巻した。2008年には、米国のスマートフォン市場で5割近い占有率を握っていた。

 しかし、2007年にアップル(Apple)が初の指触操作型スマートフォンのアイフォーン(iPhone)を発売し、2008年にグーグル(Google)のアンドロイド(Android)OSを搭載したスマートフォンが出まわってからは、ブラックベリー(当時のRIM)は市場を奪われ、2013年末には世界市場占有率がわずか2.7%(IDC予想)に落ち込む見込みだ。

 その結果、ブラックベリーの企業評価額は全盛期の840億ドルから現在では50億ドルまで暴落した。

 IDCによると、世界スマートフォン市場におけるアンドロイドOSの占有率は75%、iOSは17%、ウィンドウズ・フォンは3.9%となる見通しだ。

 業界専門家らの間では、BB10は優秀なOSと評価され、ブラックベリー全体の買収に興味を抱く投資会社や企業が皆無である実情に驚きを示す声もある。

 しかし、それと同時に、アンドロイドとiOSの圧倒的強大さを前に、BB10がいくら優秀でも、ブラックベリーが昔の栄光を取り戻すことは不可能だという見方も根強い。

 専門家によると、ブラックベリーには、金融業界の企業利用者向けに同社が開発した安全な通信網と関連サービスがあり、それだけでも45億ドルの価値がある。また、ブラックベリーが保有する特許は30億ドルの価値があり、さらに、同社は30億ドル相当の現金と投資資産を有する。それらを合計すると105億ドルの価値となり、ブラックベリーの市場評価額54億ドルをはるかに上回る。

 しかし、同社は直近四半期の決算で9億5000万ドルの赤字を計上することが確実視されており、財務状態は悪化するばかりだ。同社では赤字縮小策の一環として、従業員の40%にあたる約4500人を解雇するという倒産直前のような超大型人員削減計画を20日に打ち出した。

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