大規模データが日々の生活を変える
- 2012年10月11日
- 環境ビジネス
ナショナル・ジオグラフィック誌やタイム誌の写真記者として活躍するリック・スモーラン氏は、新著「The Human Face of Big Data」で、大規模データが市民生活をどのように変えつつあるのか多くの実例で詳しく解説している。ギガOMによると、そのなかには、健康や持続可能性、社会基盤機能効率化が含まれ、大規模データの分析が資源の節約にかなり貢献することが浮き彫りにされている。
▽大規模データ時代の夜明け
同氏の新著(11月20日発売予定)は、同名のプロジェクトの一環として出版される。同プロジェクトでは、大規模データ(Big Data)が市民生活に与える好影響を示す具体例100件以上を選りすぐって公開している。
同氏によると、大規模データの世界は、1993年時点のインターネットに似た開発段階にあり、これから社会全体に巨大な衝撃をもたす可能性がある。人々のエネルギー消費方法や医療サービスの利用方法を変化させ、動物の移動を追跡したり気象を監視したりするなど用途は広範に及ぶ。
▽5つの事例
スモーラン氏が取り上げた多くの事例のなかでも、特に影響力が大きく、日々の生活を向上させる代表的な大規模データ活用例として、同氏は次の5つを挙げる。
1.心臓発作患者のリスク検知
マサチューセッツ工科大学やミシガン大学、ブリガム&ウィメンズ病院の研究者らは、心臓病患者の使用済み心電図データを使用してコンピュータ・モデルを開発し、1年以内に2度目の心臓発作を起こすリスクがある患者を予測するツールとして役立てている。
マシン学習とデータ採掘を駆使することで、研究者らは、2度目の心臓発作の可能性を示唆する3種類の心電図パターンを特定するのに成功した。
従来のスクリーニング方法では、わずか30秒の心電図を見るだけで、再発作の可能性を見落とす可能性が70%ある。研究者らのモデルでは、数時間分の心電図を記録して高リスクの兆候を探知できるようにした。
2.高齢者を監視する「魔法のじゅうたん」
ゼネラル・エレクトリック(GE)とインテルの研究者らは、家庭用のじゅうたんに検知器を組み込み、高齢者の行動を監視する「マジック・カーペット」を開発した。
起床時間や歩行速、歩圧(歩く際の圧力)といったデータから日常行動の基本形を判明し、何らかの異常を検知すると緊急連絡先に警告を送信する仕組み。
無線検知器を多数搭載した同システムは、現時点では普及価格とは言えない高額だが、この種の自己監視システムの発想自体はすでに人気を博しつつある。
3.家電ごとに省エネ監視
ワシントン大学でコンピュータ科学を教えるシュウェタク・パテル教授は、家庭内の電化製品の電力使用量を個別に監視する検知器「エレクトリセンス(ElectriSense)」を開発した。
同検知器は、各機器が送り出す固有の電磁波干渉周波を識別することにより、どの機器が電力をどれほど消費しているかを特定する。
同検知器を用いた実験の結果、平均的な米国の家庭では、総使用電力の11%がDVR(デジタル・ビデオ録画機)によって消費されていることが明らかになった。
まだ製品化されていないが、ベルキン・インターナショナル(Belkin International)は、同技術の使用権をすでに取得しており、近いうちに商品化する計画だ。
4.GPSデータからタクシー事故の因果関係を判明
シンガポールとマサチューセッツ工科大学が手を組んだ研究プロジェクトで、研究者のオリバー・セン氏は、シンガポールの気象条件に応じた交通状況をGPSで分析した結果、雨降りの日にタクシーが見つかりにくくなるのは利用者が増えるからではなく、タクシーが走行をやめるためだという事実を突き止めた。
さらに、その状況を掘り下げて調べたところ、事故時の補償として1000ドルの債券の提出を運転手に義務付ける古くからのタクシー会社の方針が、その原因であることも分かった。
同方針が導入された当初は、その金額が翌日に運転手に返却されたが、現在では数ヵ月かかるようになった。そのため運転手が用心して雨の日に運転を控えていた。
5.早期の異常気象警報
スマートフォンの気象情報アプリケーション「ウェザーバグ(WeatherBug)」の開発企業として知られるアース・ネットワークス(Earth Networks)によると、世界人口70億人のうち60億人は気象警報を受けたことがないという。
その状況を改善し、それらの人々が悪天候や異常気象を避けられるようにするために、同社では、世界各地に数万個の検知器を設置して、温度変化や風力、雷を監視し、警報を発している。特に雷は、悪天候の重要な指標となるという。
同社では現在、それらの警報をアフリカや南米、アジアの各地に届けるためのプロジェクトに取り組んでいる。
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