天然ガス車への転換加速〜トラック輸送業界コスト削減

 トラック輸送業界で、天然ガス燃料車への転換が急速に進んでいる。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、住宅改修用品大手ロウズは配送を委託するトラック会社に対し、2017年までに数百台の所有トラックをすべて天然ガス車に切り替えるよう要望している。消費者用品大手プロクター&ギャンブル(P&G)は、すでにトラックの7%を天然ガス車にしており、2年以内に20%に増える可能性がある。宅配大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)は、14年末までに天然ガス・トラックを1000台購入する計画で、同業フェデックスは向こう10年に長距離トラックの30%を天然ガス車に切り替える予定。

 こうした動きには、国内の天然ガスが安いという理由のほか、天然ガス・エンジンの開発が進んで車重8万ポンドの大型トラックも動かせるようになったことが大きく影響している。エンジン大手カミンズとウェストポート・イノベーションズの合弁事業カミンズ・ウェストポートはこの7月に12リッターの天然ガス・エンジンを発売しており、14年にはスウェーデンのボルボも大型トラック用の天然ガス・エンジンを発表する。

 これまで天然ガス・トラックへの移行は、初期コストの高さ、メーカーや燃料補給所の不足などが障害になっていたが、圧縮天然ガス(CNG)はディーゼル燃料より1ガロン当たり約$1.50も安い。コンウェイ、シュナイダー・ナショナル、スイフト・トランスポーテーション、ワーナー・エンタープライジズといった長距離トラック会社は、CNGや液化天然ガス(LNG)車を試験導入しており、大型トラック販売に占める天然ガス車の割合は13年の1%から14年には約5%に拡大すると見込まれている。

 ただし、CNGトラックはまだディーゼル・トラックより4万〜5万ドルも高く、今後の普及は価格の低下と燃料補給網の速やかな整備にかかっている。トラック・リース大手ライダー・システムズのスコット・ペリー副社長(備品管理担当)は「5年以内に10〜20%というのは現実的な数字だと思うが、すべての変動要因を加味する必要がある」と話した。

 平均的な大型トラックは1年間にセダン40台分の燃料を消費し、台数では全米の車全体の1%に過ぎないものの燃料消費量では20%を占める。天然ガスは、ディーゼルやガソリン・エンジンに比べて二酸化炭素、一酸化炭素、硫黄酸化物の排出量が少なく、トラック業界の変化は米国の石油消費、エネルギー市場、大気の質にも影響を与える。天然ガス車への移行は8.9リッターの比較的小さいエンジンが主流のごみ収集車でも急速に進んでいる。

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