IBM、効率80%の太陽電池システムを開発 〜 太陽光線を2000倍に集中
- 2014年3月3日
- 環境ビジネス
IBMは、太陽光線を2000倍に集中させられる太陽光電池システムを開発した。
コンピュータワールドによると、同システムは熱も生成し、その熱を利用して淡水化や冷気の生成といったほかの機能も可能にする、とIBMは説明している。
同システムは「High Concentration PhotoVoltaic Therma(HCPVT)」と呼ばれ、太陽光の80%を有用なエネルギーに変換できる。
これまでの変換効率の最高記録は、フラウンホーファー研究所の研究班が開発したシステムの44.7%で、その集光倍率は297倍だった。
IBMのHCPVTシステムは、衛星アンテナのような形状の巨大な鏡を使用して小型半導体チップに太陽光を集中させ、それをエネルギーに変換する。その過程で熱も生成されるため、システムが溶解しないよう、熱をとらえて別の目的に流用する必要がある。そこで塩水を蒸発させる淡水化といった用途が考えられる。
「太陽は最も豊富なエネルギー源だ。太陽から地表に送られるエネルギーは8万5000テラワットに上るが、人類が必要とするエネルギーは15テラワットでしかない」と、チューリヒにあるIBMリサーチのブルーノ・ミケル主任研究者は説明する。
HCPVTシステムには太陽の軌道を追跡するシステムが搭載されており、鏡を最適の角度に調整して、太陽光を液体冷却方式のチップに反射させることができる。日当たりの良い地域で8時間の日照時間があれば、0.39インチ角のチップ1個で平均50ワットの変換が可能だ。
システム全体では数百というチップが使われ、25キロワットが発電される。チップは微細構造のレイヤー上に設置され、チップから数十マイクロメートルの位置を通う冷却液によって熱が吸収される。この方式は、受動型の空気冷却に比べて10倍の効果がある。
IBMによると、「太陽光を2000倍に集中させても、その冷却液のおかげでチップはほぼ同じ温度を維持する」「最大5000倍までは安全な温度に保てる」見込みだ。
同研究開発は、スイスの技術革新委員会が拠出した3年間で240万ドルの研究助成金を用いて行われている。拠出対象には、IBMリサーチの研究者のほか、太陽発電技術を提供するエアーライト・エネルギー(Airlight Energy)やスイスの「Interstate University of Applied Sciences Buchs NTB」の研究者も含まれる。
研究者らによると、露出面積1平方メートルあたり250ドル未満のコストで同システムを製作できる見込みだ。同等システムの3分の1という費用で、エネルギーのコストは、1キロワット時あたり10セント未満になる。現在、石炭火力発電のエネルギー・コストは1キロワット時あたり5〜10セント。
「システムの設計は美しいほどに簡潔だ。高価な鋼鉄とガラスの代わりに、安価なコンクリートと単純な圧縮金属化フォイルを使用する」と、エアーライト・エネルギーのアンドレア・ペドレッティ最高技術責任者は説明している。
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