中国で黒鉛汚染が深刻化 〜 環境対応車普及の裏で電池生産が汚染源に
- 2014年3月24日
- 環境ビジネス
環境への負荷を減らそうとハイブリッドや電気自動車(EV)を購入する米国人が増えているが、それによって中国ではグラファイト(黒鉛)による汚染が深刻化するという皮肉な状況が発生している。
ブルームバーグ・ニュースによると、テスラ・モーターズの「モデルS」や、トヨタのハイブリッド車(HV)「プリウス」といった環境に優しい車のほか、携帯電子機器に搭載されている電池には黒鉛が使われており、そのほとんどが中国で採掘、加工されている。
その結果、中国では、鉛中毒や酸性物質流出、都市部でのPM2.5に続き、黒鉛による環境汚染が大きな問題となっており、大気や水、農作物に害を与え、健康懸念が深刻化している。
中国政府では、それを受けて、管理状況の悪い鉱山や加工施設を閉鎖していることから、世界供給の3分の1が影響を受ける可能性がある。
インダストリアル・ミネラルズ・データの専門家は、中国政府の抑制によって2014年は黒鉛の価格が30%上昇する可能性があると予想。ただ、黒鉛価格が上がっても電池価格の長期的低下が鈍化するだけで、EV価格に大きな影響はないとみられる。
ブルームバーグ・ニュー・エネルギー・ファイナンス(BNEF)の専門家はそれについて、「黒鉛が30%高騰すれば、EV用電池の価格は5%上昇する可能性がある」と予想する。
EVや電動バイクの市場は今後10年で拡大すると予想される。テスラは先月、そうした需要の高まりに応えるために、50億ドルを投じて米国内に世界最大の電池工場を建設する計画を最近、発表している。同計画にはパナソニックも参加する見込みだ。
EVには1台あたり約50キロ、HVには約10キロ、電動バイクには1キロの黒鉛が使われており、テスラの工場だけで電池用の黒鉛需要は倍増する可能性がある。
それに対応するには、鉱山6つ分の黒鉛を新しく調達する必要がある。しかし、中国は汚染を懸念して逆に生産を抑制している。世界供給の10%を占める山東省では、2013年12月に55の関連業者が環境規制違反で業務停止処分を受けている。中国当局の介入は今後、黒竜江省の業者にも拡大する可能性がある。
最も恐ろしい汚染は、鉱山から出た銀色の粉じんが市街に降る「グラファイト・レイン」ではなく、黒鉛処理で使われる塩酸の垂れ流しだ。腐食性が極めて高いため、自然界に流出するとあらゆる生命に危険がおよぶ。
1980年代以降、新開発の黒鉛鉱山が大幅に増えた場所は中国以外にない。電池業界では中国産の供給懸念を受けて、別の供給源を探す動きが強まっている。そのため、オーストラリアでは、20年間以上閉鎖されていたウレイ鉱山が再開される予定だ。
主な充電池メーカーには、ソニーやパナソニック、サムスン電子、NECがある。
再充電可能な電池の市場は、黒鉛を使うリチウムイオン電池の需要増で2018年までに規模が52%拡大し、410億ドルに達すると予想される。伸びの多くはタブレットやスマートフォンからくる見通し。
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