日本の最先端工場が引き受けるコスト〜海外拡張へローテク化の選択
- 2014年5月5日
- 自動車関連
日本国内には世界で最もオートメーション化された自動車サプライヤー工場がある。しかし、工場は世界各地の生産拠点のマザープラント(主管工場)としての役割を担っているため、海外のローテク工場にも対応する運営が不可欠で、生産コストと労働者にかかる負担の増加を余儀なくされている。
ジヤトコの主管工場
オートモーティブ・ニューズによると、京都府南丹市にあるジヤトコの八木工場は、こうしたコスト上の苦境を象徴している。工場で生産されている無段変速機(CVT)は、日産のセダン「アルティマ」などに搭載されている。
八木工場では、完全にオートメーション化されたライン上を変速機ケーシングが円滑に流れており、作業員の姿を見かけることはほとんどない。しかし、トルクコンバーター(変換装置)の筐体を製造しているライン沿いでは、作業員が機械の間を忙しく動き回っている。
作業員が多く集まるラインは導入コストが安い一方、人件費が高い日本では運営コストも高くなる。不可欠な非効率
松本憲治工場長は、財政的に「日本では厳しい。メキシコの方が良い」と話す。それでもジヤトコは、メキシコや中国のような人件費が安い市場の工場にとってのグローバルなパイロット工場であることから、こうしたを容認しているどころか、不可欠の要素の一部とみなしている。
松本氏は「この工場ではご覧の通り、労働者が手で物を運んでいる。しかし、このラインは他のどこよりも新しい」と説明。「世界の主管工場であるため、たとえコストが高くなっても、新しい方法を試してコピーし、他の国で導入している」という。
日本国内で大掛かりな拡張を計画する製造業者は皆無に等しいが、生産技術は国内で生まれている。
「(各工場を)いかに教育・指導していくかが私たちにとってとても重要な仕事」という松本工場長は、「(日本の)外部で拡張するために何が必要かをめぐるアイデアは変化している」と話した。
パイロット・ライン
工場で製造されている「CVT8」は、ジヤトコと最大顧客である日産双方にとって鍵となる製品だ。「アルティマ」や「エクストレイル」、ニューヨーク市の「NV200」タクシーなど中型車や大型車に採用されている。
ジヤトコは2013年、上昇する需要に対処するため中国工場を開設し、今夏にメキシコでも新工場の操業を開始する予定だ。
ジヤトコは今後、低コストの台頭市場が成長を担うと期待している。ジヤトコの12年世界生産のうち、日本は75%を占めたが、同社は19年に30%まで低下させたいという。
ジヤトコはメキシコで新ラインをどう稼動させるかを試すため、八木工場でCVT8生産のパイロット・ラインを設置した。ラインは既にメキシコへ移管され、労働者とエンジニアが稼動の準備に着手している。準備にあたっては日本からもエンジニアが派遣されている。
松本氏によると、ジヤトコは当初の拡張計画を達成するため、19年4月までにCVT8工場を海外で築く必要がある。立地は発表されていないが、新工場は欧州に焦点を置く顧客をターゲットにしているという。
密接なコミュニケーション
海外事業の拡張を目的とした主管工場のコンセプトの活用は、日本のフロントオフィスと海外拠点の間だけでなく、工場の各フロア間の密接なコミュニケーションを必要とする。
ジヤトコのメキシコ工場で4年間勤務した松本氏は「問題が生じたら、私よりも先に中国とメキシコに知らせなければならない」と話す。「私たちのラインをコピーしているので、他国に電話するほうがよほど重要」という。
同時に、生産エンジニアは国内での活用向けに、小ロットの製造技術を試験している。日本の生産に関する専門知識を、需要の突然の変化に対応できるフレキシブルなラインに導入するのが狙いだ。
新たなアプローチは同様に、労働集中型の主管工場としての八木工場の役割とも合致する。小ロットのラインは大抵の場合、需要の変化に対して迅速に対応できるたくさんの労働者を擁することで、固定化されたオートメーションよりも効率性で上を行くからだ。
松本氏は「特に、より低量の技術に関心を示してきた」と語った。
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