GE、エネルギー分析市場で革命を狙う 〜 新概念のデータ・レイクを開発

 世界最大級の複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)が、再生可能エネルギーやエネルギー効率化事業に重点を移していることは、昨今における同社の動きをみれば明らかだ。

 グリーンテク・メディア誌によると、同社はその一環として、大規模データ(Big Data)をエネルギー事業に役立てる新型のデータ処理システムを開発し、電力業界での影響力をさらに強化しようと狙っている。

 GEは、ガス・タービンや蒸気タービンの開発および生産の大手であり、同社が管理するそれらの数は1600基におよぶ。その数は、世界の発電用タービン市場の4分の1を占めるに達する。しかも、タービン事業はGEのエネルギー事業のわずか一部にすぎない。

 幅広いエネルギー関連分野でGEの機器やシステムが常時生み出しているのがデータだ。同社のエネルギー技術者が分析するデータ量は5年前から10倍に膨れ上がっている。

 そういったデータを分析することは、機器やシステムの稼働効率や周囲の環境、消費実態に関する新たな洞察を抽出するのに役立っている。しかし、その一方で、データを取り扱う基幹設備がより複雑化しつつある。

 それに加えて、GEには医療や航空、鉄道輸送、製造、鉱山開発、水処理といったさまざまの事業がある。それぞれの事業部門で収集されるデータを加えると、同社が管理および分析するデータ量はとてつもなく多いことが簡単に想像できる。

 先端の検知器技術やデータ処理システムを開発して導入してきたGEが集めるデータの量は、昨今頻繁に使われる「ビッグ・データ」の域を超えている。そうしたなか、同社が新たなデータ管理システムとして提唱している概念が「データ・レイク(Data Lake)」(データ湖)だ。

 GEは2013年4月に、大規模データ向けソリューションを提供するピヴォタル(Pivotal)に1億500万ドルを投資すると発表した。

 両社は過去16ヵ月間にわたって、膨大な量のデータを扱う新たな手法を研究し、その結果として開発されたのがデータ・レイクだ。

 データ・レイクは、オープン・ソース・ソフトウェアのハドゥープ(Hadoop)を土台にして構築された。基本的には、大容量のデータを処理せずにそのまま蓄えておき、必要に応じて処理する仕組みだ。

 GEによると、データ・レイクの手法を使うと、従来の手法に比べて2000倍の高速でデータを処理できるうえ、コストを10分の1に削減できる。その結果、これまで数ヵ月費やしていたデータ分析を数日あるいは数分にまで短縮できるという。

 GE航空事業部門のデイヴ・バートレット最高技術責任者(CTO)は、データ・レイクを「森のなかにある池」に例える。

 「そこには非常に複雑な生態系が存在し、数万種の生き物による食物連鎖が確立され、池の深さをはじめ、溶存酸素や窒素の量といった要因までさまざまの要素が互いに作用しあっている」。

 したがって、「池から魚(データ)を取り出すことは、無限の質問と分析の機会が与えられる」ことを意味する。そして、その魚を池から取り出す道具が、同社の分析プラットフォーム「プリディックス(Predix)」となる。

 従来のデータベースは、養殖場で育てられる魚のようなもので、全ての魚(データ)が分類され同じえさ(条件)が与えられている。そのため、魚(データ)を取り出す際にあらかじめの予想が可能となる。

 その点、データ・レイクは、自然界の生態系である野生の湖であり、そこから得られる魚たちが暗示するデータの意味は、分析しなければ分からない。したがって、得られる分析内容は生態系の解明に役立つ。

 GEはその手始めとして、データ・レイクを航空事業で試験的に運用している。

 同社は、顧客用に1万5000件の航空便に関するデータを分析しており、2015年にはその数を1000万件に拡大する予定だ。

 同社は同じ手法をエネルギー事業に適用する計画を進めており、その後、ほかの業界にも順次導入していく。

 GEは、データ・レイクの可能性が無限に広がると期待している。

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