IBM、ワトソンの利用拡大を目指す 〜 学者向けの研究支援サービスを発表

 IBMは、人工知能ワトソン(Watson)の利用拡大を目指して、新たなクラウド電算サービス「ワトソン・ディスカバリー・アドバイザー(Watson Discovery Advisor)」を発表した。

 ワトソンは、同社の高性能サーバー「パワー(Power)」で稼働する高度のアルゴリズム群とソフトウェア群で構成される。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、新サービスは、研究者たちが大量のデータのなかから新しい研究案を発掘することを支援する。

 たとえば、同サービスを試験的に導入しているヒューストンのベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)では、7万件の学術論文から特定タンパク質に関するデータを抽出し仮説を構築して、それを科学者が検証できるようにした。

 ベイラーの例では、多種多様のがんに関与するタンパク質「p53」が変形してできた複数の派生タンパク質を生物学者が同定できたという。

 IBMのワトソン事業部門上席副社長ジョン・ゴードン氏によると、ワトソンを利用することで、社内秘の情報から有益データを抽出して、一般に公開されている科学データと組み合わせることも可能だ。

 ワトソンは、従来のコンピュータのように単純にプログラムを実行するのではなく、データや分析内容から学習できるのが特徴。

 ただ、IBMは、これまでに巨額が投資されたワトソン事業から大きな利益を得ておらず、業界専門家の一部からは、ワトソンがどのように売り上げるのか果たして疑問という厳しい見方も指摘される。

 IBMによると、ワトソンに関心を示している一社にジョンソン&ジョンソンがあるが、詳しい活用方法は明らかにされていない。

 IBMは、医療関連での活用にとどまらず、経理や法務、エネルギーといった多岐にわたる業界や業務での利用価値を高めて企業に売り込む方策を模索している。

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