藻由来の燃料生産に利益性の可能性 〜 アルジー・システムズの新技術に期待

 藻由来の燃料生産技術開発アルジー・システムズ(Algae Systems、ネバダ州)は、利益を出せる可能性の高い生産工程を開発した。

 ニューヨーク・タイムズによると、藻は驚異的な速さで成長し、高カロリー燃料の材料になる脂質といった有用な分子を含んでいるが、それらの分子を抽出することは極めて複雑でコストがかかるため、藻が原料の市販商品と言えば、現時点ではせいぜい高級スキン・クリームくらいしかない。

 しかし、アルジー・システムの燃料生産工程は、藻からディーゼル燃料をつくると同時に、下水を藻の肥料にするため地域の浄水場の役目を果たせるほか、炭素を多く含む残りかすは肥料に転用でき、炭素排出権も得られるといった複数の収入が見込め、成功すれば燃料の燃焼で排出する量以上の炭素を大気から除去できると期待される。

 工程の核となるのは水熱液化システムだ。下水に混ざった藻などの固形物を華氏550度以上で加熱し、3000ポンド/平方インチ(psi)の高圧をかけて変化させ、原油のような液体燃料をつくる。

 アルジーはオーバーン大学(アラバマ州)でその液体に水素を加えてディーゼル燃料を生産しており、独立研究機関のインターテック(Intertek)はこのほど、その燃料が業界基準を満たしていることを認証した。

 アルジーの研究は外部からも高く評価されており、米エネルギー省は最近、この水熱液化技術研究をさらに押し進めるため米主要研究機関SRIインターナショナルが率いる共同事業に400万ドルの助成金を支給した。

 これまで、藻から脂質を抽出する工程は非常に多くのエネルギーを消費し、藻の水分を抜いて細胞壁に穴を開け、さまざまの分離技術を使わなければならなかったが、高温および高圧処理法は分子を分解でき、脂質のほかタンパク質や炭水化物といった有益な商品も得られる。

 この分野を研究するテキサス大学オースティン校のハリル・バーベログル助教授(機械工学)も、アルジーの技術を「圧倒的に将来性のある手法」と評価している。

 アルジーがアラバマに所有する試験工場では、最近、エリー湖で発生した飲料水汚染問題の原因にもなったリンや窒素といった汚染物質を藻に消費させている。

 工場はモービル湾に面し、ナイキ製の巨大なプラスチック袋に下水と湾から取った藻を入れ、水に浮かべて繁殖させている。湾の水によって適当な温度が保たれ、波の動きで中身がかくはんされるため、手がかからないのが特徴。

 初期の結果は好ましい内容で、日本の重工業系エネルギー企業IHI(東京都)は同社に1500万ドルを投資した。

 従来のバイオ燃料事業は、期待に反して失敗に終わる例が多かったが、アルジーは燃料と同時に飲料水を作り、自治体から下水処理料金を徴収することで利益を出せると見込まれる。

 また、エネルギー省が炭素排出量の少ない最新バイオ燃料のメーカーに提供している再生可能燃料クレジットを、再生可能燃料の混入を義務づけられている石油会社に販売できる可能性もある。

 事業を試験段階から商業規模へ移すには、8000万〜1億ドルのコストがかかると見られている。

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