新興企業、亜鉛鉄フロー電池を商業導入 〜 アルカリ電解質の特許技術を利用
- 2014年9月8日
- 環境ビジネス
モンタナ州の新興企業ビジョン・エネルギー・システムズ(ViZn Energy Systems)は、亜鉛鉄を使ったフロー電池の商業導入を開始した。
同社は、ジンク・エアー(Zinc Air)の社名で2009年に設立され、9月に入ってから、商業規模製品の初の投入と同時に社名変更した。
グリーンテック・メディアによると、同社が発表した初の商業製品は、80キロワットおよび160キロワット時の亜鉛レドックス・フロー電池だ。20フィートの貨物コンテナに収められている。
同社はまた、ブルースカイ・エネルギー(BlueSky Energy)が手がけるオーストリアのマイクログリッド開発計画に同製品を導入する。
ビジョン・エネルギーは2014年3月に、モンタナ州のフラットヘッド・エレクトリック協同組合(Flathead Electric Cooperative)が2基目となるシステムを導入したことを発表。さらに今月、蓄電ソフトウェアとシステムを開発する新興企業のグリーンスミス(Greensmith )が、ビジョン・エネルギーから商業規模の蓄電池を調達することも決まった。
ビジョン・エネルギーの「Z20」システムは、1キロワット時あたり800ドルの価格帯を目指している。同社が最終的に目指しているのは、そのコンテナを5基まとめて、1メガワットおよび3メガワット時のシステム「GS200」を構築することだ。同社の営業担当副社長カーク・プローツ氏は、コストを1キロワット時あたり450ドル前後まで下げられると説明している。
その価格帯は、バナジウムや鉄クロム、臭化亜鉛を用いたほかのフロー電池とほぼ同じだ。フロー電池は、電解液をセル内にポンプ循環させて充電と放電を行うため、密閉された電池と異なり電解液のタンクを追加することで容量を拡大できる。ただ、最新のリチウムイオン電池ほどの効率はなく、最大出力も劣る。
ビジョン・エネルギーのシステムは、酸性ではなくアルカリ性の電解質を使っている点に特徴がある。ロッキード・マーチンが過去10年近くかけて開発したアルカリ電解質の取り組み方は、酸性電解質を使用した亜鉛電池で生じる結晶の形成を防ぐことができる。
しかし、アルカリ電解質は別の物質の塊を電極に形成し、別の問題を引き起こしたため、ロッキードは研究開発を中止した。ところが、その塊は、フロー電池においては反応表面積を拡大し、出力密度を高める効果があった。
そこで同社は、ロッキードの特許技術を使用して「化学の弱点を利点に変えた」と、ビジョン・エネルギー上級副社長のクレイグ・ウィルキンス氏は話す。「ロッキードはその化学研究に8年の歳月と1000万ドルを投資した。当社はそれを商業化するだけで済んだ」と同氏は語っている。
ビジョン・エネルギーは、これまでに投資家から2000万ドルの投資を受けた。今年後半から来年前半にかけて生産力を拡大するために、最大2500万ドルの追加資金調達を模索している。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
ビットコイン半減は価格にいかに影響するのか 〜 最高値更新から乱高下、次の半減期が目前に
-
2024年4月22日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
ボルティモアの橋崩落、輸出・小売業者に影響
-
米国のMBA課程、人工知能分野の教育を積極化 〜 会社で求められる技能に学生側も関心を強める
-
2024年4月18日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
テスラ、急速充電網を開放~EV普及の節目となるか
-
2024年4月15日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
EV生産コスト、27年にはガソリン車より安く~ガートナーが予想
-
人間の労働力の方が人工知能より安価 〜 MITの研究、雇用機会の大部分は人工知能にまだ奪われないと結論
-
ドローン配送に現実味~運用範囲広がる
-
アマゾンや小売大手ら、頻発する返金詐欺で巨額の損害 〜 詐欺集団ら、ティックトックで協力購入者たちを募集
-
2024年4月1日 アメリカ発ニュース, 世界のニュース, 自動車関連
中国の自動車メーカー、慣行覆しEV生産を迅速化
-
2024年3月28日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
ウェイモ、テキサス州で社員向けロボタクシー運行