代替エネルギー、化石燃料に迫る 〜 発電コスト低下で火力を上回る地域も

 米国では太陽エネルギーや風力による発電コストが過去5年間で大幅に低下し、場所によっては石炭や天然ガスといった既存資源を使った発電より安くなっている。

 ニューヨーク・タイムズによると、2014年は風や日光が強い大平原地帯や南西部を中心にその傾向が加速し、いくつかの電力会社がソーラーおよび風力発電業者から天然ガス火力発電所より安く電力を購入している。

 テキサス州では、オースティン・エネルギーが2014年春に1キロワット時(kwh)あたり5セント以下という低価格でソーラー発電業者と20年間の電力購入契約を結んだ。

 9月には、オクラホマのグランド・リバー・ダム管理局が風力発電業者からの電力購入契約を承認し、2015年には手続きが完了する見通しだ。グランド・リバーの電力利用者はその結果、合計約5000万ドルを節約できると見込まれる。

 さらに、オクラホマのアメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)は、2013年に行った競争入札の応札価格があまりに安かったことから、風力発電の契約購入量を当初予定の3倍に増やした。

 現在、多くの州が再生可能エネルギー由来の電力購入を電力会社に義務づけているが、オクラホマにはそういった規定がないにもかかわらず、再生可能エネルギー源が化石燃料に取って代わっている。AEPは、「電気料金を払う側の得になるためにそうしただけのこと」と話している。

 代替エネルギー電力の値下がりを可能にした政府の寛大な補助は、近く縮小または期限切れとなるが、最近の分析では、支援策がなくなっても化石燃料と競争できるとみられる。

 投資銀行ラザード(Lazard)によると、商業規模の1kwhあたり発電コストは、もっとも安い部類としてソーラーは5.6セント、風力は1.4セントである一方、天然ガスは6.1セント、石炭は6.6セントだ。政府の支援策がなければソーラーのコストは約7.2セント、風力は3.7セントとなる。

 2008年から技術別の発電コストを比較しているラザードは、「5年前に比べソーラーや風力発電はコスト低下が著しい」と報告している。

 ただ、再生可能エネルギーと化石燃料のどちらにも隠れたコストはある。日光は太陽が出ているとき、風力は風が吹いているときしか発電できないため、電力会社は需要増減に対応するため別の電力供給源を準備しておく必要がある。一方、伝統的電力源は炭素排出といった問題があり、規制や運営コストが高まっている。

 そのため、いくら安くなっても風力やソーラーが既存の発電所にすぐに取って代わるわけではない。電力会社は、多少高くてもガス・タービン・コンバインド・サイクル発電(ガス・タービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式)の価値を認めている。

 太陽エネルギー産業協会(SEIA)によると、大規模ソーラー発電事業の電力会社に対する長期販売契約価格は、2008年以降で70%以上低下しており、特に南西部では低下傾向が顕著だ。

 また、一般的な商業規模のソーラー設備の初期コストも2009年以降で3分の1以上低下している。風力発電コストも低下が続いており、米風力エネルギー協会(AWEA)によると、2013年は電力会社向けの供給契約が記録的な数に達し、価格は過去最低に下がった。

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