スイスの電力技術および自動化技術大手ABBは、電気自動車(EV)充電設備の遠隔監視にパブリック・クラウド・サービスのマイクロソフト・アジュール(Microsoft Azure)を活用する。
ABBが設置した充電設備は40ヵ国で3000基に上る。マイクロソフト・アジュールはすでに導入されており、11月末までにはABBの充電設備からのデータがアジュールに集まり始まる見通しだ。
フォーチュン誌によると、ABBでは、EV向け充電設備の増設にともなって、充電設備が生み出すデータも増えることから、需要に合わせて運用しやすいアジュールを採用することで、充電設備群の管理システムを拡充する。
そういったモノのインターネット(IoT=Internet of Things)技術は、クラウド技術の威力が真に発揮される分野と考えられている。EV向け充電設備には、システム監視用の各種の検知器が搭載されており、IoTの応用例の一つでもある。
ABBがパブリック・クラウドを選ぶにあたっては、世界規模で提供されセキュリティーと承認の基準をサポートしている、という条件があった。プロバイダーをマイクロソフト1社に絞ったことで、ABBは、各地域ごとに異なる電話サービス会社と取り引きする必要がなくなったという利点もあった。
クラウドが物理的に比較的近くにあることは、応答時間を短縮するうえで重要だ。「2〜3ヵ月に1回はソフトウェア更新が必要になる。そのたびにカザフスタンまで飛んでいくわけにはいかない」と、ABBのグローバル・コンバージョン事業担当上席副社長オットー・プリース氏は話す。
クラウドと充電設備のあいだでは情報が双方向に転送される。ソフトウェア更新や修正プログラムが充電設備に送られる一方、充電設備の稼働状況データがクラウドに送られる。
「充電パフォーマンスの情報をリアルタイムで得られる」(プリース氏)ことから、問題があればすぐに検知して、故障が起きる前に対応できる可能性もある。現場に作業員を送る場合も、どこに問題があるかを事前にある程度知って、必要な部品を用意して出かけることができる。
充電設備を所有および運営するABBの顧客は、アジュールによって管理される充電実績データを見て、どの設備がどのように使われているかを理解できるようになる。また、需要動向に応じて設備の追加を検討するといったことも可能だ。
パブリック・クラウド・サービス市場でマイクロソフトと競合するアマゾン・ウェブ・サービシズ(AWS)は最近、IoTの用途を想定した機能を導入しており、IoT対応環境の整備を強化している。
クラウド技術企業だけでなく、ほぼすべてのIT企業がIoT市場の潜在性に注目していると言っても過言ではない。今後もABBとマイクロソフトのような提携関係の発表は相次ぐと予想される。
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