風力発電量が飛躍的に増加しているテキサス州で、夜間電力を無料にする電力会社が増えている。
ニューヨーク・タイムズによると、テキサスでは現在、50以上の電力小売会社が卸売価格の高い時間帯の電力消費を減らす方法を導入している。
TXUエネルギーの場合、日中の電気料金はやや高めだが、夜9時〜翌朝6時は無料という時間帯別料金(TOU)体系を提供。その結果、家庭の電力消費行動に大きな変化が起きている。
たとえば、洗濯機や食器洗浄機を夜9時以降に使ったり、朝の出勤前にすべての電化製品のプラグを電源から抜いて夕方帰宅した後に差し込むといったかたちで日中の電力消費を極力減らそうとする世帯が増えた。
電力会社がそういった電気代体系を提供できるのは、第一にテキサスが全米でもっとも風力発電の盛んな州であるためだ。風力は、同州の電源構成の約10%を占めている。
また、テキサスは、他州とはほとんどつながっていない独自の送電網を持っている。そのため、風力発電で夜間に生産した電力を州内で消費しなければならないという事情もある。
夜間は風がもっとも強く、風力発電には連邦税優遇があるため電力が安い。電力需要が最大になる日中から需要を少しでも夜間に移せば卸売料金を安くでき、支出額の大きな発電所を新設する必要も避けられる。
電力会社にとって夜間電力の無料提供は、消費者を喜ばせるためだけの行為では決してない。規制緩和で市場競争が激化するなか、顧客を維持し、風力発電の過剰供給によって送電網にかかる負荷とコストを軽減するための重要な経営戦略になっている。
業界団体の米国電力研究所(EPRI)のエネルギー効率担当幹部オマー・シディクィ氏はそれについて、「電力会社と利用者にとってまさに一挙両得の状況」と話す。
同様の試みは、メリーランド州やマサチューセッツ州、そしてイタリアでも行われている。メリーランド州のボルティモア・ガス&エレクトリックは、需要が高い時間帯の消費量を1キロワット時減らすごとに割引料金の権利を取得できる制度を導入している。
ただ、そういった制度をテキサスほど大規模に展開している大型電力市場はない。米国内で市場の自由化がもっとも進み、電力小売業者は既存顧客の維持や新契約の獲得に熱心なため、新しい手法に適した独自の環境が生まれている。
「米国の消費者は選択肢を求める。消費者の選択肢とその影響や恩恵が電力業界の将来を支える」とTXUのジム・バーク最高経営責任者(CEO)は話す。
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