シリーズ世界へ! YOLO③ タイ〜水と仏の国 前編

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

Photo © Mirei Sato

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スコールがくれた
魔法の時間

 チェンマイ観光の目玉の一つは、タイの国を象徴する神聖な動物「象」だ。バンコクやその他の地域にも、象のショーやライドを楽しめる場所は存在するが、チェンマイのある北部スリン県は、アジア象の生息地として昔から有名だ。

 私たち一行は、メーサ・エレファント・キャンプに向かった。川と渓谷を利用した、チェンマイ最大の象の施設で、90頭がいる。バスから降りる私たちに水をかけようと、入り口で待ち構える子供たちから逃げて園内に入ると、象たちが水浴びをしていた。カメラを向けると、待っていたように鼻から水を噴き上げた。

気持ち良さそうに水を浴びる象Photo © Mirei Sato

気持ち良さそうに水を浴びる象
Photo © Mirei Sato

 タイ北部では、象と人のつながりの歴史は長く、今でもペットとして飼っている家が多いそうだ。象使い(マフート)は主に山岳少数民族で、父から息子へ受け継がれ(神聖な生き物なので、最近まで女性が乗ることは許されていなかった)、子供の頃から訓練を受ける。

 マフートは特別な言葉を使い、象の耳の裏を足で触って、コミュニケーションをとる。象も、マフートの顔や体だけでなく、声と音を認識する。

 チェンマイ周辺は、高級建築材チークの産地でもあり、人々は長い間、木材や家具の輸出で生計を立てていた。しかし、乱開発や洪水などの影響で産業が成り立たなくなり、1989年に伐採が禁止されると、人も象も仕事を失った。

 象は、1日に自分の体重の1割にあたる数百キロの餌を食べる。育てる費用が馬鹿にならず、象を手放す家が増えたが、人との結びつきが極端に強い動物なだけに、その別れは悲惨なものだったそうだ。

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マフートの青年
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マフートは、象の耳の裏を足で触ってコミュニケーションを取るPhoto © Mirei Sato

マフートは、象の耳の裏を足で触ってコミュニケーションを取る
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 そこで、観光に象を活用するようになった。「欧米ではよく、Save the elephant(象を救え)と言うけれど、ここでは象が私たち人間を救ってくれている」と、ガイドのティッピーさんが説明した。

 水浴びを終えた象たちは、特設ステージに移動した。ここでは、サッカーボールやバスケットボール、絵筆などを使ったパフォーマンスがある。観光客をさんざん楽しませてくれた後は、客席に近寄ってきて、バナナやサトウキビの餌あげと、写真撮影タイム。その後、観光客を乗せて園内を散策する「エレファント・ライド」に移る。

 しかし、写真撮影の最中で遠雷が轟き始め、雲が広がって、あっという間にざーっと雨が降り出した。ガイドブックに載っているような南国の楽しい雰囲気は一変し、観光客は一目散に駐車場へ。

 誰もいなくなってしまったキャンプで、私はもう一人カリフォルニアから来たライターと、ライドに向かった。傘と防水シートを貸してくれるというし、もともとタイには「濡れ」に来たようなものだ。

 高さ2メートルはある象の背中は、広くて安定していて、馬に乗るよりよっぽど快適だ。けっこうな勾配の道を、とっこりとっこり、上がっていく。

 雨に湿る森、水かさを増す川、小屋で休息する象たちと、マフートの住居から立ち上る煙。遠雷が時折聞こえる以外、しんと静まり返った渓谷を、象に揺られて巡るのは、なかなかできない魅力的な体験だった。

show 40

サッカーやお絵描きの腕前を披露。終わった後は客席に寄ってくるので、バナナやサトウキビを買って、束のまま躊躇せずに与えてあげよう。食欲旺盛な象たちに、十分な餌を確保することは死活問題。マフートの暮らしを支えるためにも、観光客のマネーは重要だ。耳を澄ますと、サトウキビをガリガリと噛み砕く音が聞こえるPhoto © Mirei Sato

サッカーやお絵描きの腕前を披露。終わった後は客席に寄ってくるので、バナナやサトウキビを買って、束のまま躊躇せずに与えてあげよう。食欲旺盛な象たちに、十分な餌を確保することは死活問題。マフートの暮らしを支えるためにも、観光客のマネーは重要だ。耳を澄ますと、サトウキビをガリガリと噛み砕く音が聞こえる
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取材協力/タイ国政府観光庁(Tourism Authority of Thailand = TAT)

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