ビバ・キューバ あなたも行ける禁断の国
文/細田雅大(Text by Masahiro Hosoda)
写真/川畑嘉文(Photos by Yoshifumi Kawabata)
- 2012年4月20日

キューバ中部の古都、トリニダーの街角
Photo © Yoshifumi Kawabata

VIVA CUBA
キューバへの渡航は法律違反?
「キューバ旅行って、やはり違法なんだと思うわ」
オレゴンから来たという米国人教師が、隣に座る私に言った。
私たちはキューバの国営航空クバーナが、1日に1便だけ飛ばすメキシコ・カンクン行き旅客機の中にいた。見知らぬ旅行者同士の会話に花が咲き始めたのは、キューバの首都ハバナを飛び立ち、メキシコへの90分ほどの飛行時間があらかた過ぎた頃だった。私と同様に彼女も、キューバ訪問は今回が初めてだったという。
「米国によるキューバへの経済制裁はアンフェアだ」という点で私たちの意見は一致した。かの地で楽しく過ごしたばかりだから、キューバ人に肩入れする気持ちは強かった。しかし、渡航の違法性については微妙に意見が分かれた。
「いや、アメリカ人がキューバへ行くこと自体は必ずしも違法じゃないみたいなんですよ」と私は言った。「違法なのは、金を使うことだそうです」
怪訝そうな顔の彼女を見て、私は話題を変えた。「クバーナの旅客機が旧ソ連製だというのは本当のようですね」。そして非常口を指差した。彼女の位置からは見えないが、非常口のサインはロシア語だった。彼女は目を輝かせ、いそいそとカメラを取り出した……。
フロリダのすぐ南に位置するカリブ海最大の島、キューバ。1959年の革命を導いたフィデル・カストロの下、50年以上に渡り社会主義体制を敷くこの国は、米国にとって「敵国」だ。米政府は「Trading with the Enemy Act」という法律に基づき「敵国」との金銭取引を禁じている。だから米国人や米国居住者は、キューバとの間で金を使ってはならない。金が使えないのなら航空券だって買うことはできない……はずだ。
しかし実際には、私の隣に座ったオレゴンの教師のように、一部の米国人は何事もなく航空券を買って何事もなくキューバ観光を楽しんでいる。永住権保持者である私もまたそうだ。昨年6月、私は1週間ほどキューバに滞在した。滞在中、もちろん金は使った。あれから9カ月が過ぎたが、米当局に逮捕される気配はない。もしかすると本誌読者の中に当局の関係者がおられるかもしれないが、その場合は、切にお目こぼしを願う次第だ。
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