シリーズ世界へ! YOLO⑮
Pura Vida! コスタリカ 後編

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

スペイン語で「肥沃な海岸」という名のこの国は、カリブ海と太平洋にはさまれた、アメリカ大陸のど真ん中にある。国土面積はウェストバージニア州とほぼ同じだが、そこにある豊かさといったら…。世界のバイオダイバーシティー(生物学的多様性)の約5%が集中する。軍隊を放棄し、環境保護を最優先に掲げ、エコツーリズムの先進国として世界中から人を集めるコスタリカ。その魅力と見どころの一端を紹介する。

 

アボカドをくわえて枝にとまるオスのケッツァール Photo © Mirei Sato

アボカドをくわえて枝にとまるオスのケッツァール
Photo © Mirei Sato

Savegre サベグレ

 コスタリカを縦断して走る道路「パン・アメリカン・ハイウエー」。アラスカを最北端に、南はアルゼンチンまで。メキシコ、コロンビア、ペルー、チリ…。途中で枝分かれしたり中断したりしながら、全長3万マイルに渡って、北・中・南米大陸を貫く。旅好きならいつか走破してみたい、スリルとロマンにあふれたルートだ。若き日のチェ・ゲバラがオートバイで駆け抜けた道でもある。
 首都サンホセから、このパン・アメリカン・ハイウエーに乗って南東へ。やがてパナマ国境にまたがる、世界遺産のタラマンカ山脈(Cordillera de Talamanca)にぶつかる。標高3819メートル、コスタリカで最も高いチリッポ・ヒル(Cello Chirripo)を抜ける。夏だというのに霧が濃く、風も冷たい。昔の農夫は、牛が引く荷車で山を越え、旅をしながら農産物を売っていた。運悪く車輪が壊れてこの山中で夜を迎え、凍え死ぬ人が多かったので、スペイン語で「死の丘」と呼ばれているそうだ。
 その丘を抜けたあたりで、ハイウエーを降りた。ここにコスタリカでも一、二を争う清流、サベグレ川(Rio Savegre)がある。川に沿って谷底へ、未舗装のぬかるんだ山道を30分ほど下る。伝説の鳥、ケッツァール(quetzal)が住む森に到着した。

日本のTV局の取材を受けたこともあるマリーノさん Photo © Mirei Sato

日本のTV局の取材を受けたこともある
マリーノさん
Photo © Mirei Sato

 この鳥を見るために、世界中からバードウォッチャーがやってくる。朝6時。すでに十数人がカメラと双眼鏡を手に集まっていた。ここにはケッツァールの好物アボカドの木が茂っていて、その近くに巣がある。ヒナにエサを与えるため親鳥が飛んでくるに違いないと期待して、待っているのだ。
 バードウォッチングガイドのマリーノさんと一緒に、しばらく待つ。メスが飛んできた。トカゲを口にくわえ、注意深く周囲を見渡して巣の中に運び込む。私たちが立っている場所からは巣の中まで覗けなかったが、ヒナがいるのだろう。
 そして、いよいよオスの登場だ。こちらはアボカドの実を口にくわえている。輝く緑の羽と、真っ赤な腹、黄色のくちばし。白と黄緑、エメラルドグリーンがグラデーションになった長い尾。頭のてっぺんと首のまわりが、フサフサと毛羽だっている。朝日が上がるにつれ、太陽の反射を受けてますます輝いた。飛び立つ瞬間、羽と尾が広がり、鮮やかなターコイズブルーが空中を舞う。連写のシャッター音とともに、ため息が漏れた。

Photo © Mirei Sato

Photo © Mirei Sato

 「ここではケッツァールは映画スター並みの人気でね」とマリーノさん。その血を飲むと永遠の命が手に入るという、手塚治虫の漫画「火の鳥」はケッツァールをモデルにしたそうで、「日本のテレビ局の取材に付き合ったこともあるよ」と言っていた。
 ケッツァールは標高2000メートル級の山と雲霧林(cloud forest)気候を好む。パナマやニカラグアでも見られるし、グアテマラでは「国の鳥」にまでなっているが、生息数と遭遇のチャンスはコスタリカが圧倒的に多い。タラマンカ山脈は絶好の環境で、サベグレ峡谷には160羽ぐらいが巣を作っているそうだ。
 どんな報道現場でも見たことがないほど巨大な三脚と長い望遠レンズをかついだ女性2人組に会った。ワシントンDC在住で、ケッツァールに「取り憑かれて」休暇のたびにサベグレに来ているという。「12回目にして初めてヒナの写真が撮れたのよ」と興奮して見せてくれた。
 


 

1

2 3 4 5

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
STS Career

注目の記事

  1. 2025年12月1日

    就職&雇用ガイド2025
    監修 STS Career https://usfl.com/author/stscar...
  2. 2025年10月8日

    美しく生きる
    菊の花 ノートルダム清心学園元理事長である渡辺和子さんの言葉に、「どんな場所でも、美しく生...
  3. 2025年10月6日

    Japanese Sake
    日本の「伝統的酒造り」とは 2024年12月、ユネスコ政府間委員会第19回会合で、日...
  4. アメリカの医療・保険制度 アメリカの医療・保険制度は日本と大きく異なり、制度...
  5. 2025年6月4日

    ユーチューバー
    飛行機から見下ろしたテムズ川 誰でもギルティプレジャーがあるだろう。何か難しいこと、面倒なこ...
  6.        ジャズとグルメの町 ニューオーリンズ ルイジアナ州 ...
  7. 環境編 子どもが生きいきと暮らす海外生活のために 両親の海外駐在に伴って日本...
  8. 2025年2月8日

    旅先の美術館
    Norton Museum of Art / West Palm Beach フロリダはウエ...
ページ上部へ戻る