第56回 犬の飼い主の条件 後編
文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)
- 2013年5月5日
前回、「末永く愛犬と楽しく暮せる飼い主の条件」として健康、経済面でのゆとり、フレンドリーな対応、世話好きな性格を挙げましたが、今回も犬の飼い主の条件についてお話しします。
◆ 安定性があること。 犬との生活で、飼い主の感情が安定していることと同様に、ライフスタイルが安定しているということはとても重要です。仕事の関係で出張が多かったり、スケジュールが不規則であったり、転勤が多かったりでは、犬との生活に支障を来してしまいます。なぜなら、犬は規則的な生活を続けることで精神的な安どを感じるからです。「次」が読めない毎日が続くと、ストレスをため、それが問題行動につながりやすくなります。また、転勤族の場合、引っ越し先で犬が飼えないとなれば愛犬の次の家探しに四苦八苦。家族にも愛犬にもとても悲しい結果を招くことになってしまいがちです。不安定な状況の場合、犬を迎え入れるのは見送る方が無難でしょう。
◆ 根気よく、常にクールであること。 犬のしつけで大切なのは根気。飼い主があきらめた時点で犬は「もういいのか」と自分のルールで生活し始めます。すぐに効果が表れなくてもあきらめず辛抱強く犬のしつけを続けること。また、犬を教育する際にいらいらしたり、すぐに怒ったりしては犬の信頼と尊敬を得ることができません。きゃーきゃー騒ぎすぎたり、褒めすぎたりするのも威厳に欠けるので、犬との関係作りにはクールでいることが大事です。散歩中に何か起こっても冷静に対処できる飼い主だと犬は一緒にいて安心ということを認識します。
◆ 勉強好き、遊び好きであること。 犬は好奇心旺盛で遊び好き。それゆえ、常に飼い主が頭と体に刺激を与えてあげないとすぐ退屈し、いたずらをします。そこで叱るのは飼い主の横暴です。犬を鏡と思い、犬の問題行動は自分の問題行動と考えましょう。飼い主自身が遊び好きなら、愛犬と一緒になって外で運動したり、家でゲームをしたりとさまざまなことが楽しめ相互効果になります。また、飼い主が勉強熱心な性格だと愛犬の行動を観察するのが面白く、犬が送るサインやボディーランゲージがどんどん理解できるようになります。そうしてお互いのコミュニケーションが深まると犬は飼い主をより信頼・尊敬するようになり、結果として飼い主としての重要なリーダーシップがふるえるようになってきます。
自分に必要な犬

わたしに「犬の親」になるということを一生かけて教えてくれた愛犬ジュリエット
Photo © Maho Teraguchi
ここまで読んで「当てはまっていない…」と思った人もいるかと思います。しかし、当てはまっていないから犬の飼い主になれないのではなく、犬が飼い主の条件を持てるように導いてくれることもあります。カリスマ・ドッグトレーナーのシーザー氏の名言に「欲しい犬がやって来るのではなく、自分に必要な犬がやって来る」というのがあります。今の愛犬は「何か」を運んで自分のもとにやって来たのかもしれません。例えば、愛犬のために仕事にもっと精を出し経済的な安定が得られる、近所の犬の飼い主と頻繁に会話するようになり社交的になる。また、愛犬の教育を通し我慢強くなり、すぐに感情的にならず「親」らしい威厳が身についてくるなど、愛犬との生活で今までの自分に欠けていたものが現れ、変身できるかも。ただ、自分の限界を知り、無理なものは無理。(今は)犬の飼い主にはなれないと自認できるのも責任ある大人の行動。理想高い飼い主の条件ですが、犬の飼い主になるということはそれだけの大役を引き受けるということであり、そこには重大な決断がいるということを知ってほしいという願いで書きました。犬くらいと甘い考えで飼い始めた飼い主の無責任さで、大変つらい目にあう犬たちを毎日現場で見ている私からの強い願いです。
次回は、「家庭内の不一致」についてお話します。お楽しみに!
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