第55回 犬の飼い主の条件 前編
文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)
- 2013年4月5日
どんなに犬が大好きでも、ライフスタイルやもろもろの条件で犬を飼うのに適していない場合があります。私の周りでもそういう理由で犬を飼わない人たちがいますが、とても責任感ある選択だと思います。というのも、衝動的、または安易に飼われ、そのうち全く構ってもらえなくなったり、揚げ句には飼育放棄され家を失ったりする犬たちが山のようにいるからです。今回は二号に分けて「愛犬と末永く楽しく暮らせる犬の飼い主の条件」についてお話します。
「犬育て」は大仕事
私はいつも冗談半分で愛犬ノアの「母親」と名乗り、日々母親業にいそしんでいますが、その表現は全く大げさでないと思っています。犬を一匹飼うということは親としての役目を引き受けるのに値します。よく「愛犬はベストフレンド」という表現を耳にしますが、愛犬とは「親」という立場で暮らす方がお互いの関係がぴったりはまると思います。なぜなら、犬の飼い主には「育てる」「教える」という役割と責任が伴ってくるからです。では、その「犬の親」を務めるにはどんな条件を満たすべきでしょうか。
◆ 一にも二にも心身健康であること。 毎日の散歩と運動が必要な犬との生活で体が健康であることはもちろん、心の健康もとても大切です。犬は周りのエネルギーを大変敏感に感じとります。飼い主の心が終始揺れ動いていると犬の精神衛生にも大きく影響を及ぼすことになり、問題行動を起こしがちになります。飼い主の心の平穏は愛犬をも平穏にする大切な材料です。飼い主が病気になったため、また最悪のケースでは死別でシェルターに運ばれてくる犬たちも多いので、やはり「親」として自分の心身の健康管理にくれぐれも注意を払いたいものです。
◆ 経済的に余裕があること。 現代社会で責任を持って犬を育てるにはお金がかかります。食費さえ確保していればなんとかなる…と思っているなら大間違い。食費は犬育てにかかるわずかな部分で、そのほか、もろもろにかかる予算の大体を把握していないと驚くことになるでしょう。アメリカで犬を飼う際の最低限コストは平均で一年に約500ドルから800ドルかかると言われています(※ASPCA調べ)。これはあくまで大きなけがや病気にならず、プロのサービスもなしで過ごす場合の平均金額です。
◆ 周りにフレンドリーであること。 人と仲良くできる術を身に付けていることは犬の飼い主としてのキーポイントです。日ごろから近所の人たちと友好的な関係を築いていれば愛犬の少々の問題も目をつぶってもらえても、そうでない関係だと犬を理由に、あることないことを問題にされてしまう可能性もあります。特にアパートなど近所と密接している場合は周りと平和に暮らすことは愛犬を守るという意味でとても大切。近所の大型犬の飼い主が、あらかじめ周りの住人に携帯電話の番号を渡しておき、「犬のことで何かあれば直接電話を」とお願いしておけば、管理人に苦情を言われずに済むと言っていました。飼い主として最低のエチケット(ふんの後始末、横添え歩行、過剰吠え防止など)を守っている姿勢を見せるのも大事なことです。
◆ 面倒くさがりではない人。 以前ある人が、食器を洗うのが嫌なのでドライフードしか与えないと言っていました(ドライフードでも衛生上食器は洗うべきですが…)これは極端な例にしても、面倒くさがりな性格だと犬との生活はかなりの負担になります。年中温暖で雨のない地域に住んでいるならまだしも、どんな悪天候でも毎日数回愛犬と外に出る必要があり、その都度犬も自分も用意が必要です。犬は生活の100%を飼い主に頼って生きています。犬の飼い主にとって世話好きという要素、そしてそれを楽しめるというのは大きな条件です。

ふぶき直後でも散歩は絶対。コートを着せ、
散歩後は足に付いた塩を拭き取る。それも犬の飼い主の当然の仕事
Photo © Maho Teraguchi
※ASPCA=The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals (www.aspca.org)
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