第62回 正しいリード歩行(前編)
文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)
- 2013年11月5日
「うちは裏庭があるので散歩はしない」「小型犬だから家の中を走り回って十分な運動をしているので外に出さない」と考える人が多いようですが、果たしてそれは犬にとってどうなのでしょう。「室内犬・座敷犬」という言葉を目にすることがありますが、それは売る側が「手間がかからず飼いやすい」と作り上げた言葉に過ぎず、犬種もサイズの大小にも関係なく、犬には毎日の散歩が必要です。散歩は犬のさまざまな欲求を満たす役目をし、また、飼い主と愛犬の関係作りに大変重要な機会なのです。今号と次号にわたり、犬にとって欠かせない散歩と、その散歩を快適に行うための正しいリード歩行についてお話しします。
散歩の重要性
散歩が単なる排せつと運動のためだと考えると大間違いで、散歩は犬のさまざまな欲求を満たす役目を果たしています。オオカミのころから「群れで移動する」という遺伝子を備えた犬にとって、パック(家族)で歩く行為はその本能を満たす上で大切です。犬にとって散歩は、飼い主と行う一日の最大のイベントであり仕事なのです。さらに、人間社会の中で、飼い主のリードで安全快適に、また他人に迷惑をかけずに散歩をこなすことで良い市民の一員となり、その過程で飼い主は愛犬の信頼と尊敬が得られます。散歩は相互関係作りの絶好の場となるのです。室内や裏庭だけで過ごしていれば、犬は社会と出会う機会がありません。好奇心旺盛で常に刺激が必要な犬にとって、新しいもの、変わったにおい、空気や音、老若男女いろいろな人間、近所の犬たちに出会う機会が必要で、それらを通し社会を学ぶのです。犬同士の汚物のにおいの嗅ぎ合いは掲示板のようなもので、ほかの犬の排せつ物で、犬はどの犬がいつどんな心境でその場を通ったかが分かります。それは彼らにとって欠かせない自己存在の宣伝と情報交換の場。散歩は脳と体の活性化の大切な手段で、その機会が与えられない犬は、慢性のストレスや外気や日光を受けることがないことから病気を引き起こす原因にもなります。
悪循環を好循環に
しかし、そんな大切な散歩も愛犬がリードをぐいぐい引っ張ったり、動くものに激しく反応する癖があったり、ほかの犬を見ると気が狂ったようになるなどマナーがなっていないと、飼い主も外に出るのがおっくうになります。すると犬はますますフラストレーションをためこみ、ほえる、かむ、などの問題行動を見せ始めたり、臆病で非社交的な性格になったりという悪循環が起こります。正しいリード歩行をマスターするということは、愛犬との散歩を快適に行えるようにするということで、楽に散歩できれば自然に回数も時間も増えてきます。快適で十分な散歩で心身共に満足した犬は、家に戻るとリラックスし、今までストレス発散のためにしていたいたずらをする必要がなくなります。また散歩中に愛犬との関係作りが成立してくれば、家での関係ももっと充実します。意識的な散歩を続け、悪循環を好循環にすることで愛犬との暮らしをより快適にする。ちなみに、散歩の恩恵を受けるのは犬だけではないことは言うまでもないですね。
人間の親子が横に並んで手をつなぎ、楽しい話をしながら時々顔を見合わせ道を歩いている光景を見るのが大好きです。理想の飼い主と犬の散歩姿は、そんな人間の親子がほのぼの歩く姿と同じではないかと思います。他人が見てほのぼのするような姿で散歩ができるよう、私も日々愛犬と訓練に励んでいます。
次回は「正しいリード歩行」のテクニックについてお話しします。お楽しみに!
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