第65回 犬のグループ(その2)
文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)
- 2014年2月5日
去年の11月にペンシルベニア州で行われたナショナル・ドッグ・ショーの優勝者は、アメリカン・フォックスハウンドのジュエル(写真参照)でした。彼女の属するハウンド・グループから優勝者が出るのはこの大会始まって以来のことらしく、ジュエルはその快挙を見事に成し遂げたのです。テレビにかじりついていた私も、素晴らしいスタイルでさっそうとリング内を小走りする姿に見ほれ、「この犬が優勝するのでは?」と思っていたらずばり当たりでした! 今回はそのジュエルが属するハウンド・グループについてお話しします。
抜群の嗅覚・視覚
ハウンド・グループは、大きく分けると①セント・ハウンド(嗅覚に非常に優れた犬種)と②サイト・ハウンド(飛びぬけた視力を持つ犬種)の二つに分けられます。
セント・ハウンドは、鋭い嗅覚を活用して獲物を追跡する目的で改良され、長い間狩猟犬として人間に仕えてきました。現在では、狩猟以外にも麻薬捜査犬や逃亡者・失踪者探索犬としても活躍しています。このグループの犬は垂れ耳の犬が多く、ビーグル、バセット・ハウンド、ブロッド・ハウンド、ダックスフンドなどが含まれます。セント・ハウンドは、遠吠えのような声も使って獲物を追いつめるところから、吠え声が非常によく通ることでも知られています。ビーグルはサイズも小ぶりで、アパートでペットとして飼う人も多いですが、この遠吠えが近所との問題になることもあります。
サイト・ハウンドは、優れた視覚を利用し、遠い距離から見つけた獲物を抜群の瞬発力で追いかけ仕留めることができます。このグループの犬種は、すらっと脚が長く筋肉質でやせ型が特徴です。グレー・ハウンド、サルキー、アフガン・ハウンド、ウィペット、ボルゾイなどがこのグループに含まれます。これらの犬種をペットとして飼う場合、独立心が強く、また小動物を追いかける習性があるケースが多いことを覚えておく必要があるでしょう。セント・ハウンドとは反対に、吠えることが少ないので、都会の住宅街で暮らす際の利点になります。
ハウンドの抱える問題
ハウンド・グループの中には、一番先に人間に家畜化された犬種がいくつか存在し、このグループの犬たちは長い間、人間の生活を支えてきました。現在も狩猟以外の場で引き続き、さまざまな形で人間に仕えるハウンドですが、同時に彼らへの非人道的な扱いが問題にもなっています。
世の中には、人間のより良い生活のため、実験に使われる動物がたくさんいますが、犬の代表選手は、ハウンド・グループのビーグルです。扱いやすいサイズ、人間に従順で温厚な性格であること、多産で食欲旺盛という理由などから、動物実験に一番適した犬種として世界中で使われています。それらは、実験用に繁殖・飼育され、さまざまなテストの実験台になり、ペットとして飼われることもないまま一生を終えます。
人間は娯楽のために多くの動物を利用しますが、世界で一番俊足のグレー・ハウンドの競犬レースもその一例。レース犬は2歳前後から訓練されレースに出場、4歳から6歳で引退します。優良なレース犬は引退後も繁殖犬として使われますが、ほかの引退犬はほとんど殺処分されてきました。その非人道的な扱いに、動物愛護団体などが動き、ここ近年、レースを引退したグレー・ハウンドを家庭のペットにという活動が行われています。ペットとして飼われているグレー・ハウンドの多くは、レース場でのその姿とは正反対に、おとなしく手間のかからない犬が多いので、ローメンテナンスな犬が好みの人におすすめの犬種です。
次回は「ワーキング・グループ」について詳しくお話しします。お楽しみに!
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