第68回 犬のグループ(その5)
文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)
- 2014年5月5日
先日、マンハッタンにある勤務先のシェルターに、大都会には珍しい犬種が保護されてきました。ジャーマン・ショートヘアード・ポインターです。普通なら、小さな顔に、長い足、そして筋肉質の体に深い胸とアスリート体型なのですが、保護されてやってきた犬はかなり肥満気味で、若いのに行動もノソノソという感じでした。元々この犬種は一日活発に猟場で仕事をするために改良されてきた犬種です。毎日走り回ったり頭を使ったり心身の運動量をかなり必要とする犬種。果たしてマンハッタンの大都会で満足できる生活を送っていたのだろうか? などと、数人のシェルター関係者で「場違いな環境」にいるその犬の大都会での生活を想像していました。
その昔、人間は狩猟の際に綱などを使って獲物を捕らえていましたが、銃猟が主流になってから狩猟の様子も変わり、同時に猟を共にし、猟師を助ける犬たちの仕事内容も改良されてきました。銃による鳥猟を共にするために改良されてきた犬種たちをイギリスではガン(銃)・ドッグと呼び、AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)ではスポーティング・グループという名称で呼んでいます。今回はその鳥猟のために改良されてきた犬種が属するスポーティング・グループについてお話します。
探し屋・回収屋
鳥猟を共にするスポーティング・グループは、獲物の場所を知らせる「探し屋」と、打ち落とされた獲物を回収してくる「回収屋」に分かれます。
探し屋は、獲物を見つけたら、その居場所を吠えて知らせるのではなく、体勢で知らせます。見つけたら片足をあげ獲物をポイントして知らせる犬がポインターで、獲物の場所を伏せて教える犬はセッターです。一般にポインターと言えばイングリッシュ・ポインターのことを指し、他には上記で触れたジャーマン・ポインターなどがいます。セッターには、アイリッシュ・セッター、イングリッシュ・セッター、ゴードン・セッターなどがいます。また、猟師が獲物を仕留めやすいように動いて獲物を興奮させ、猟師の近くにおびき寄せて猟の手伝いをするスパニエル系の犬種たちもいます。
猟師が撃ち落とした獲物を回収してくる回収犬は、水に強いリトリバー種やウォータードッグたち。この回収犬たちは、落ちた獲物をいち早く見つけ、大きな獲物でも丁寧にくわえて猟師の下に持って来るのが役目。ラブラドル・リトリバー、ゴールデン・リトリバー、チェサピーク・ベイ・リトリバーなどが代表選手でしょう。
陽気で活発かつ温厚
上記で紹介した犬たちは、獲物を狩るために改良されたのではなく、探したり回収したりが本来の仕事であるため、攻撃性が低く、全般に温厚な性格かつ飼い主への服従性が高いのが特徴です。また、気質が安定しているために、ペット犬として人気のあるグループです。特に、ラブラドル・リトリバーは、アメリカでは常に人気ランキングのトップを占めています(AKC調べ)。しかし、もともと猟師と一日猟を共に、猟場で忙しく元気に動き回って満足度を高めてきた、このグループの犬たちです。家庭のペットになっても、十分な運動量と心身の刺激を与えてあげないと肥満などからくる健康問題や、退屈からくる問題行動も出てくる可能性が高いでしょう。回収犬たちにはボールやおもちゃなどを取って来る機会を一杯与えてあげること。カウチポテトより断然アウトドア派向きのスポーティング・グループの犬たち。学習能力が高く、服従性に優れているので、飼い主の役割をきちんとこなせば愛犬は楽しい生活を運んで来てくれるはず。
次回は「ハーディング・グループ」について詳しくお話します。お楽しみに!
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