第30回 皆勤賞

文/福田恵子(Text by Keiko Fukuda)

photo © Ray Bouknight

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 義務教育終了まで残すところ半年を切ったノアだが、彼もニナも、学年の終わりに何度となく「皆勤賞」の表彰状をもらってきた。英語ではPerfect Attendance Awardと呼ぶ。

 学年最初の教師による説明会、バック・トゥ・スクールナイトでは、配布物の中に「欠席の場合の連絡方法」と題されたプリントも含まれる。確実に教師が生徒の欠席の事実とその理由を把握できるように、「何時までに電話してください」と言われる場合もあれば、文章のひな形を配布した上で「記録に残せるように、必ずEメールで送ってください」と指定されることもある。中学以上になると、個別の教師宛でなく(教科により担当教師が異なるため)、学校の事務局に電話する。その場合、「7年生のニナの親ですが、今日は102度(華氏)の熱があるので学校を休ませます」と明確に休みの理由を伝えなければならない。すると、ここ最近の傾向としては「平熱に下がってから24時間以上経つまでは登校させないように」と指示されることが多い。他の生徒や教師に風邪をうつすようなことがあっては、学校全体の出席率に大きな影響が出る。学校の出席率は学校区から振り分けられる補助金の額を左右する。つまり、出席率の低い学校は運営資金不足に陥る可能性もあるため、学校と募金活動の旗を振るPTAは常に出席率を高く維持するために注意を払っている。

 また、1日前に高熱で子どもを休ませ、2日目も引き続き休ませる場合でも、改めて連絡する必要がある。日本だったら「今日も熱が下がらないのだろう」と察してくれるのが普通だと思うが、アメリカでは誰も言葉にしなければ察してくれない。ノアがまだ低学年の頃、それに気付かずに2日目の連絡を入れなかったところ、始業時間開始と同時に小学校から電話が入り、「今日は、ノアは一体どうしたんですか?」と聞かれて焦った。以来、連続で欠席する場合でも毎日連絡するようになった。

怪我や病気もなく、登校拒否にもならず

 さらに、ノアが高校生になると、出欠状況の確認は以前にも増して厳しくなった。ドキドキさせられるのが、電話による「●時限目にノアは出席していなかった。その理由を即刻、事務局まで連絡してくるように」と冷たい音声で言い渡される録音メッセージだ。そのメッセージを受け取ったのは一度や二度ではない。ただし、本人に確認してみると、教師の勘違いだったり、手違いだったりするケースがほとんど。しかし、私が出張している時に学校から電話が来た時は、「鬼のいぬ間のなんとやらか?」と血圧が一気に上昇。ノアに電話すると「今日は中国語のクラスが開講されずに、皆でバスに乗ってフィールドトリップに参加した。教室が空っぽだったのと、中国語の先生が事務局に連絡し忘れていたので、皆にそういう連絡が入っているみたい」と真相を説明してくれて安堵できた。それでもいまだに連絡が来るたびに「すわ!」とパニックに陥ってしまう。

 それにしても、気が小さい(!)私にはできないが、病気や怪我でなくても、長期の旅行などで学校を休ませる親が少なくないことも新鮮な驚きだった。ある母親は「旅先で貴重な体験を積むことも、学校では学べない大切な社会勉強の一環。本人の視野を広めるためには旅行が学校に優先される場合もある」と堂々と見解を披露してくれた。私が子どもたちを病気以外で休ませたのは、冬休みに日本に帰省するため、1日学校を休まないと飛行機がどうしても取れないという時1回だけだった。それとは別に、数年前にはお正月に日本から戻る飛行機の成田での搭乗口を間違え、便を逃したこともあった。航空会社からは「1週間先まで空きがありません」と言われたが、2日後には学校が始まってしまう。私はオンラインで、別のエアラインの通常料金よりもバカ高いチケットを3人分(夫は留守番)購入してアメリカに戻って来た。

 とにかく本人たちにとって大事なことでもあり、親として感謝したいのは、子どもたちが健康で重い病気や怪我に縁がなく、はたまた、登校拒否にもならずに、学校に毎日通ってくれることだ。そして昨日、久しぶりに会った日本人ママ友のYさんと話していたら、彼女の話に驚かされた。「家を引っ越したけど、長男が卒業までは高校を転校したくないと言うので、毎朝6時半には家を出るの」。家はサウスベイ、高校はサンタモニカの先のパシフィックパリセーズである。フリーウェイが混んでいなくても、片道1時間以上は余裕でかかる距離。「頑張って運転しているYさん」に私から皆勤賞を進呈したくなった。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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