第81回 犬を助けるということ(後編)
文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)
- 2015年6月5日
先日も職場で、同僚たちが一生懸命になって、飼い主を失くした犬の家探しをしていました。ペットストアや動物病院などの掲示板は「家族募集中」のホームレス犬たちのポスターで溢れ、また、Petfinder.comなどのインターネットのサイトに掲載されているホームレス犬の数は後を絶ちません。毎日ものすごい数の犬が殺処分される中、パピーミルやバックヤード・ブリーダー、また一般家庭でも、仔犬がどんどん作られ、ペットストアやオンラインショップでは、仔犬が何百ドル、何千ドルで売買されています。その世間の矛盾と人間の悪行に、やるせない思いが募ります。
長い目で、広い視野で
「愛する犬を1匹でも多く幸せにしたい!」と、動物愛護の世界に飛び込みましたが、前回お話したように、同志であるはずのアニマル・レスキュー団体の中には、安楽死寸前の命を救うことに固執し過ぎるところがあります。衝動的かつ、感情的な行動で犬を保護し、その結果発生するさまざまな問題で世間から信用を失い、結果として、シェルターなどで保護されている犬たちのアダプションの妨げになっているのです。
今そこにある1匹の命を助けるのは本当に大切です。しかし、長い目で、広い視野でこのホームレス犬問題の解決策を考えないと、いつまでも同じことが続きます。犬というのは人間の家族と暮らしてこそ幸せなのです。だから、すべての犬に家族が与えられるような環境を作ること。そこにゴールを持って行くことが大切なのではないでしょうか。そのためには去勢・避妊の奨励、法律化にまで進めるべきです。また、車の免許のように、犬の飼い主教育を受けたものだけが得られる飼い主ライセンスを作るのも一案でしょう。そして、犬の専門家はもっと飼い主の立場とレベルになって犬の飼い主教育を提供し、飼い主の意識の向上に貢献すべきです。
「ただの飼い主」ができること
私はただの犬の飼い主だから何もできないとか、世間の犬を苦しめるようなことはしてない…ではなく、飼い主としてできることはいっぱいあります。また、実は犬を愛しているはずの飼い主が、知らずに犬を苦しめていることが多いのです。それは「犬」という動物をきちんと理解せず、よく知っているものだとたかをくくっているところがあるからです。犬が問題行動を起こしたら、飼い主の知識不足が原因なのに、対処できないと簡単にシェルター送り…。犬が好きなら、犬について勉強し、理解し、責任を持って育てる。それが犬を助けるということなのです。
飼わないという選択
犬を飼わないという選択も、犬を助けるためにできることの一つです。これだけの数のホームレス犬が家を求めているのに、それはおかしいのでは? と思われそうですが、飼えない時に飼えないと言い切れるのは大切です。今、犬の親になれないなら飼わない。犬を飼うということは親業を担うことなのです。それなりの責任と覚悟が必要です。また、もう1匹増やすことができないなら受け入れない。安易な考えや、衝動的、感情的な行動は往々にして悪い結果をもたらします。そして、そこで苦しむのは犬なのです。犬を愛するなら、まず犬を学ぶ。犬には何が必要なのか。それを理解し実行する。それが愛する犬を助けることなのです。
次回は、「庭犬の悲劇」と題し、カリフォルニアに来て異常に出くわすことの多い「庭犬」のお話をします。お楽しみに!
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