第17回 「本物のグリーンシティ」

文&写真/小野アムスデン道子(Text and photos by Michiko Ono Amsden)

公園だけじゃない
緑と森の身近さ

“公園だけじゃない“と見出しに書いたが、先進的なグリーンシティと言われるポートランドには、まず公園が多い。大小さまざまな公園が200以上もある。小さい方は、世界最小の“ミル・エンズ・パーク(Mill Ends Park)”で、なんと直径約61cmで見た目は花壇。しかし、公式に市の公園に指定されていて、ギネスブックに「世界一小さな公園」として認定されている。元々はオレゴン・ジャーナルの記者がオフィスから目に入る道路の穴に花を植えて公園にしようと思い立ち、その小さな公園についてコラムを書いたことから歴史は始まるらしい。ポートランドらしいウィットに富んだ公園だ。

サウスウエストエリアに400エーカー(東京ドームが35個近く入るぐらい)を超える広大な“ワシントン・パーク(Washington Park)”は、古くから市民に愛されている緑の濃い公園だ。公園内には、拡張工事を隈研吾氏が手掛けた“日本庭園”、野外コンサートやイベントなど市民憩いの場ともなる“オレゴン動物園”、ローズシティの象徴でもあるインターナショナル・ローズ・テスト・ガーデンほか、いろいろな施設がある。

ワシントン・パークのロッジのような建物がワールド・フォレストリー・センターPhoto © Michiko Ono Amsden

ワシントン・パークのロッジのような建物がワールド・フォレストリー・センター
Photo © Michiko Ono Amsden

中でも、“ワールド・フォレストリー・センター”は、ポートランドだけではなく、世界の森林の現状やその保護、森林を持続可能にするための活動が、インタラクティブな展示も混じえて紹介されている。例えば、世界一大きなセコイアの木の断面が置いてあったり、森林の火事対応などの際の上空からの降下やジープの運転のシミュレーターがあったり、大人も子供も楽しみながら森林のことが学べる。自分たちの森のことだけでなく、世界レベルで考えていこうというコンセプトでポートランドの人の森への深い愛が感じられる。ワシントン・パークは広大で美しい公園だが、ポートランドにはどこにでも緑があって、そこを歩く”トレイル”も身近だ。

住宅街の中にトレイル
リスに鹿もあちこちに

オレゴン州で言うと、映画「Wild (邦題:わたしに会うまでの1600キロ)」で、主人公が死にそうになりながら歩いていたワシントン州からカリフォルニア州におよぶロングトレイル“パシフィック・クレスト・トレイル”も通っているが、ポートランドで言うところの“トレイル”は、住宅街の中にだってあちこちあって、道しるべが立っている。言わば、家の裏の林を歩く感覚だ。緑が深い森を、トレイルシューズを履いて朝から走っている人もよく見かける。我が家も普通の住宅街にあるが、2、3分も歩けば、ちょっとした森に小さな小川があってリスや鹿が顔を見せるし、「夜はコヨーテ(小型のオオカミのような肉食獣)が出るから散歩は危ないよ」などと言われる。ビルが林立(その合間にはやはり公園があるのだが)するダウンタウンから車で15分も走れば、森に囲まれた住宅街。そんな自然とスケール感はやはりポートランドの大きな魅力だ。

市から車で20分ぐらいのところで、鹿を発見Photo © Michiko Ono Amsden

市から車で20分ぐらいのところで、鹿を発見
Photo © Michiko Ono Amsden

■ワールド・フォレスタリー・センター
World Forestry Center

住所: 4033 SW Canyon Rd, Portland, OR 97221
電話:503-338-1367
http://www.worldforestry.org

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小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

ライタープロフィール

世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ。旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、翻訳多数。日本旅行作家協会会員。

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