子供の資格保護法

文/ミチコ・ノーウィッキ(Text by Michiko Grace Nowicki)

 今回は、2002年に法制化された、子供の資格保護法(the Child Status Protection Act.以下「CSPA」という)についてご説明します。CSPAは、アメリカ市民や永住権保持者が21歳以下の未婚の子供のために永住権(グリーンカード)を申請した際の長い待ち時間に対処するうえでの大きな一歩となりました。CSPAが法制化される前は、21歳以下の子供のための請願書が保留となっている間に、多くの子供たちが21歳の誕生日を迎えてしまい、子供としての資格を失うケースがありました。請願中に子供が21歳になった場合は、さらに長い待ち時間が発生したり、いくつかのケースでは親の請願書によるグリーンカード申請の受益者となるには不適格とされたりする場合もありました。しかし、現在では、CSPAにより、請願中のビザが許可された日の子供の年齢ではなく、アメリカ帰化移民局(USCIS)がビザ申請を受け付けた日の子供の年齢が考慮されます。

 永住権保持者は、21歳以下の未婚の子供のために家族ベースのグリーンカード申請を行うことができます。この申請には、フォームI-130の提出が必要となり、このカテゴリーの申請は「F2A」とされます。永住権保持者の子供が21歳以上の場合は「F2B」というカテゴリーに分類され、「F2A」と「F2B」では待ち時間に大きな違いが出てきます。

 CSPAが法定化される前までは、I-130請願中に子供が21歳になった場合、ただちにその子供の優先カテゴリーがF2AからF2Bへと下げられました。つまり21歳の誕生日を迎えると同時に、グリーンカードの待ち時間が長くなりました。しかし、CSPAによって、以下の条件を満たしていれば特定の請願者の子供は「子供」としての資格が与えられるようになりました。

● 2002年8月6日以前にグリーンカード申請に対する最終決定がなされていない
● 2002年8月6日以降にグリーンカード申請中、もしくは許可が下りた状態である
● フォームI-824を提出し、ビザが取得できるようになった日から1年以内にグリーンカードを取得する意思があること(子供がすでにアメリカに合法的に滞在している場合は、フォームI-485)

 この条件のもと、フォームI-130が許可され、あなたの子供が21歳になるまでに優先日(つまりフォームI-130がUSCISに受理された日)が「現行(Current)」になっている場合、1年以内にグリーンカード申請を行うことで、あなたの子供はCSPAによって保護されます。もしフォームI-130が許可される前、もしくは優先順位が「Current」になっていない段階で子供が21歳の誕生日を迎えた場合は、簡単な日にちの計算をすることで、CSPAが適用されるかどうか確認できます。これについては次回(10月5日号)のコラムにて詳しく説明します。

※この記事はクライアントからの質問を一般的に書き換えたものです。法的なアドバイスが必要な場合は、専門家に相談してください。

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ミチコ・ノーウィッキ (Michiko Nowicki)

ミチコ・ノーウィッキ (Michiko Nowicki)

ライタープロフィール

ウィリアム・S・リチャードソン・スクール・オブ・ロウ卒業。米国移民弁護士協会所属、米国弁護士協会所属、ハワイ州弁護士協会所属。日本居住歴19年。バイリンガル。

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