近年、アメリカへ旅行して、アメリカ国内で出産する妊婦さんが増えてきました。それにともない、外国人の出産をサポートする斡旋業者やマタニティツアー会社が増えています。2019年1月に、連邦検察官と出入国税関執行局(ICE)により、こういった出産斡旋業者に関与する個人20名が起訴されました。ICEのプレスリリースによると、移民詐欺、マネーロンダリング、所得税申告の不正行為など、さまざまな違反で起訴されています。
生地主義により、アメリカで産まれたこどもは両親の国籍に関係なく、アメリカ国籍を取得できます。こどもがアメリカで教育を受けられる、またアメリカ国籍のこどもによって将来親も永住権を取得できるという理由により、アメリカでの出産を決意する方が多くなってきたようです。中国人の「カリフォルニア出産」、ロシア人の「フロリダ出産」が増加していますが、日本人女性には「ハワイ出産」が人気のようです。
では、外国人がアメリカで出産することは違法なのでしょうか? 妊婦がアメリカへ旅行したり、アメリカで出産したりすること自体は違法とはいえません。しかし、出産するためにアメリカへ来るにも関わらず、妊婦であることや出産する予定を隠したり、ESTAや観光ビザを利用して入国目的を「観光」と偽ったりすることは違法です。つまり、入国審査やビザ審査で嘘をつくことは、不正行為とみなされます。また、病院代を支払わずに出産後に帰国してしまった人や、訴訟を避けるために逃亡した外国人も多く、深刻な問題となっています。
今回の摘発は、中国人の出産の斡旋会社が多いカリフォルニア州で行われました。20名が起訴されましたが、多くは逮捕前に中国へ逃亡したため、実際逮捕につながったのはたったの4名です。逮捕された一人は斡旋会社の運営者であり、彼女はわずか2年間で中国から300万ドルの送金を受けていました。彼女が保有する210万ドルの豪邸、ベンツ4台、預金100万ドル以上はすべて押収されました。
斡旋会社は、ビザの取得方法や入国審査をパスする方法、また入国後の妊婦や家族の滞在先、病院・医師を探すサポートをし、約4万~8万ドルの費用を請求していたようです。また、カリフォルニア州のロサンゼルス空港では入国検査が厳しいため、ラスベガスやハワイ等の観光地から「旅行者」として入国するよう指示していました。厳しい入国審査を避けるためにハワイ経由で入国し、ホノルルのトランプホテルに泊まると虚偽した妊婦もいました。
アメリカ政府は、このようなビジネスにより、多くのこどもが自動的にアメリカ市民権を取得し、いつでもアメリカへの入国が可能となることで、国家安全保障のリスクも発生すると見ています。
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