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- アメリカ エネルギーロードを往く ニューメキシコ編

バイオ燃料装置のデッサン(solar day)
Photo © Nobutoshi Mizushima
リオグランデ川を遡るようにニューメキシコ州を北上する。州都のサンタフェを通り、一路ニューメキシコ州北の街タオスを目指す。
去年、サンタフェの大学で行われていたSolar Day というイベントに友人から誘われた。インドやアフリカなどの発展途上地域での太陽光発電プロジェクトの経験を持つ友人のクリスチャンが、その時に大学を案内してくれた。ニューメキシコという場所は原子力発電所こそないものの、ウラン採掘場を始め、未だに原子力の研究が続くロスアラモスやWIIPなど、アメリカの原子力産業とは切っても切り離せない州だ。しかし、そんなニューメキシコでも近年、持続可能なエネルギーに眼を向けたプロジェクトが盛んに行われ始めている。
キャンパスでは、太陽光発電だけではなく、小風力、バイオマスや水の再利用や家作りからエネルギー消費を考えるやり方などが発表されていた。クリスチャンは一つ一つ丁寧に説明してくれた。彼は今、アメリカ各地で小風力の普及に力を入れているという。小風力とは庭に建てられるぐらいのものから、学校の敷地に置けるぐらいのサイズの小さな風力発電の装置だ。小さな太陽光パネルでもその数倍の効率があることを考えれば、小風力はまだまだかもしれない。それでも十分将来的に役立つ、独立したエネルギーソースの一つだと思う。
小風力を実際に作っている工房に行ってみた。軽くて丈夫なレッドウッドの木を正確に決まった形とサイズに切っていく。ドラマ「北の国から」を思い出しながら、小風力作りを数時間たんたんと手伝った。電気がないと暮らせない現代人の一人に、この作業は、その電気を自分の手で作れることを実感させてくれた。
でも 、最近こういったエネルギーのことを再生可能とかサステイナブルとか言ってしまう感覚を、少し残念に思う時がある。何をもって持続可能というのだろう。太陽にもその寿命はあり、風はもっと変わりやすいものだ。だいたい川の流れを変えてせき止めダムを作ったものが自然エネルギーと呼べるのだろうか。それらをもって持続可能と言ってしまうこと自体が人間のおごり以外の何物でもない気がしてならない。どんなものにもかぎりがあるという想いから接していくことが大切なのではないか。黙々と私に削られているはずのレッドウッドの木がそんなふうに語りかけている気がした。
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