アメリカ エネルギーロードを往く
ニューメキシコ編

文&写真/水島伸敏(Text and photos by Nobutoshi Mizushima)

 

家の半面は土の中(アースシップ) Photo © Nobutoshi Mizushima

家の半面は土の中(アースシップ)
Photo © Nobutoshi Mizushima

 雪をかぶったタオス山が近づいてくると、背の低い木が続き、さらにハイデザート感が強くなった。大地がさけたような深い渓谷の下をリオグランデが揚々と流れている。タオスは、一千年以上前からこの地で暮らす先住民のタオスプエブロ族と農業主体で暮らす白人たちや自然を愛するアーティストやヒッピー系の人たちが混在しながらできた。この街のはずれで面白いプロジェクトが70年代から行われている。アースシップというそのプロジェクトは、地球環境と人間の生活を考えて家を作るというものだ。

 家の建築に使われているのは、使い古したタイヤや空き瓶、空き缶といったどこでも手に入るものだ。リサイクルのもので作られた外観はどこか自然から影響を受けたガウディ建築を思わせる。グリーンハウスを家の南側に作り、北側は土をもって壁を覆う半地下のような構造になっている。家の中には緑が多く置かれ、水の循環、空気の洗浄、温度の調整と何役もかっている。使う電気をすべて、屋根に付けられた太陽光や小風力で補うというもので、いわば元祖スマートハウスといった感じだ。電気の消費は極力抑えられている。かと言って家の中には、大画面のテレビ、大きな冷蔵庫、洗濯機に乾燥機があり、生活スタイルはなんら変わりない。大きく南側全体に作られた窓により、朝早くから日暮れまで、部屋はとても明るい。この窓はパッシブソーラーと言われるもので、冬に太陽の熱を十分に家の中に取り入れることができる。土で作られている家はその熱を夜の間保ち続けることができるので、暖房は必要ない。ちなみにタオスはスキーでも有名な場所で、冬は氷点下の日が続く。逆に夏は北側が土で覆われているため、家の中は地中の温度(華氏58度)の影響を受け、日中の強い日差しをブラインドで調節すれば、部屋の中は涼しく保つことができるので冷房もいらない。それ以外にも、アースシップの家では雨水を循環させたり、室内グリーハウスで野菜を育てたりと自然環境と人間の生活の共存スタイルがいろいろと実践されていた。

 アースシップは一つの家がオフグリッドで独立して暮らせることを証明している。こんな家が世界中にできれば素敵だと思った。その一方で、アースシップのプロジェクトは素晴らしいが、あそこで生活をするために彼らは、大きな4WDを乗り回すと言ったクリスチャンの言葉が思い出された。街に住むメリットとデメリット、自然の中に住む長所と短所。どちらにしてもまだ何か足りていない気がする。
 


 

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