アメリカ エネルギーロードを往く
ニューメキシコ編

文&写真/水島伸敏(Text and photos by Nobutoshi Mizushima)

 

ハイデザートと呼ばれるニューメキシコ特有の風景 Photo © Nobutoshi Mizushima

ハイデザートと呼ばれるニューメキシコ特有の風景
Photo © Nobutoshi Mizushima

 州の南部、メキシコとの国境近くの小さな街を通るたびに、やたらとボーダーパトロールの車とすれ違った。ニューメキシコ州は、もともとはネイティブアメリカンが多く住む土地で、スペインの植民地としての長い歴史を経て、メキシコ、アメリカとなった。今でも多くのネイディブ、スペイン系、メキシコ系、ヨーロッパ系の人たちが混ざり合って暮らしている。

 今、そんなニューメキシコではハイデザートの広大な土地と強い日差し、降水量が少ないことなどを理由にアメリカの太陽光発電の中心地になろうという動きがある。州の北部には260エーカーの広大な敷地に太陽光ファームの建設が始まっている。南部のこのあたりでもいくつかの太陽光ファームを見ることができた。小さなパネルを低く敷き詰めているところや、何個もパネルをくっつけた大型のものまで色々ある。

 何もない道がしばらく続き、メサと呼ばれる丘と丘の谷間にさしかかった時に、ウインドファームが出てきた。よく見ると白いタービンの下の敷地には太陽光パネルが並んでいる。そこを過ぎたところにバーがあったので、休憩しようと立ち寄った。あいにくバーは閉まっていたが、しばらくウロウロしているとバーの主人らしき人がでてきた。

 隣の大きな敷地にウインドファームが建てられたのは5年ほど前だと教えてくれた。そして、去年、ウインドファームの敷地に太陽光パネルが設置され、今年はさらに倍以上の太陽光パネルが設置される予定だという。主人のトーマスさんは定年後、生活のために週3、4日だけバーを開けている。この辺りも電力会社に土地を売ったり貸したりして、リッチになった人がいるというのに彼はそうでもなさそうだ 。彼にこの土地を売ったりしないのか尋ねてみると、俺はいいよと首を振った。辺りをゆびさしながら、ここのやつらはみんな良い奴だと言う。そしてなにより、ここに住むのが好きだと言った。数マイルは誰も住んでいないような場所で、彼は簡単にそう答えた。お金や便利さよりも優先したその何かを想像してみた。
 


 

1

2

3 4 5 6

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 日本では、何においても横並びが良しとされる。小学校への進学時の年齢は決まっているし、学校を...
  2. Water lily 今年は年頭から気にかかっている心配事があった。私は小心なうえに、何事も...
  3. 峡谷に位置するヴァウリアル滝の、春から夏にかけて豪快に水が流れ落ちる美しい光景は必見。島には約16...
  4. 2024年6月3日

    生成AI活用術
    2024年、生成AIのトレンドは? 2017年に発表された「Transformer」...
  5. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  6. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  7. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  8. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
ページ上部へ戻る