「犬のどんなところが好きですか?」という質問に、「飼い主がどんなに不格好でも、全く見かけで判断しないところ」と答える人が多くいます。確かに犬は、容姿どころか、社会的な地位も、学歴も、財産の有無も全く関係なく、大切に育ててくれる飼い主には手放しで愛情を注ぎます。反対に人間は、犬の気質より容姿重視な人の方が多いのではないでしょうか。今回は、見た目に囚われやすい人間と、見た目は関係ない犬との間のギャップについての話です。
好みの顔
以前非常に驚いた話を聞きました。超好みな顔の犬の写真をネットで見つけ、その顔の犬が欲しくてたまらなくなり、その犬種の中でも「その顔」を扱うブリーダーが外国にいるのを発見。自ら飛行機で現地に出向き犬を購入してきた人がいた、と。ぬいぐるみのような愛くるしいその特別な顔の犬という「容姿」が大事で、飼うと決めたわけですから、その犬の気質がどうであってもさほど関係なかったのでしょう。
可愛い・かっこいい容姿を持つ犬への人気は今に始まったことではありませんが、最近巷では変顔や変な体形の犬が流行り、それが異質であればあるほど好まれ、大金をはたいて買い求める人がいます。「これはお金になる!」と、奇形犬の改良に勤しむブリーダーもたくさんいます。言うまでもなく、人間が不自然に作り出した奇形犬は、心身に色々な問題を併発し、一生病気と闘ったり、早死にしたりすることも珍しくありません。
好みの判断材料
犬同士が相手を判断する際、「ぬいぐるみのようで可愛いから」とか、「リボンが似合う」とか、「ハンサム!」「かっこいい~」などの見かけを材料にしません。犬は相手のエネルギーや、社会性の有無などで合う、合わない、好き嫌いを決めます。その判断基準は人間に対しても同じで、人間の持つエネルギーや、飼い主として犬のリーダーになれる素質を持っているか、また自分を理解してくれるかなどを重要視し、好き嫌いを決めます。人間の体のサイズや性別、人種を読む犬も、美貌や高級な服装は全く関係ありません。
小さいぬいぐるみのような犬を「か弱く、おもちゃみたい」と思うのは人間だけで、もしその犬の気質が大変激しく攻撃的であれば、犬同士では迷惑がられる存在になり、またリーダーの素質があるなら、大型犬も引っ張って行きます。しかし、人間は小さい愛玩犬に対しては、どうしてもその容姿から赤ちゃん視してしまい、問題行動を起こしていても「あらあら、どうちたの?」と赤ちゃんをなだめるように、大目に見て甘やかしがちになります。すると犬は、人間は無条件で特権をくれると誤解します。かわいい~と言っても犬自身は人間がなぜ喜んでちやほやするのか理解できず、優越感で一杯になり、手に負えない犬に育ってしまうこともあります。また、容姿重視で犬を選択すると、犬との暮らしが全く予想していなかった展開になることも少なくないので要注意。
もちろん見かけも大事ですが、見かけばかりにこだわり、内面の美しさを見逃すのは悲しいことです。これは人間関係でも言えることですね。飼い主が犬の容姿をこえて、その犬の本質を理解し愛する時、飼い主と犬の間に「本当の関係」が成立するのです。容姿で犬の良し悪しを判断したり、流行りを作ったりするのではなく、容姿以外の犬の良さがわかる人間が増えてほしいと願うばかりです。
次回は、「犬の飼い主の特典」と題し、犬と暮らすことで得るものについてのお話です。お楽しみに!
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