ニナが高校に入学して1カ月。私は彼女に「ボランティア活動のクラブに入って」とリクエストした。リクエストと言うか命令に近い。ニナと5歳違いの兄のノアもそのクラブに入っていたが、入っただけでほとんど参加してなかった。なぜ、こんなに親の私が必死になっているかと言うと、大学のアプリケーションで、高校時代にボランティアを何時間、何をしていたかという点が重要視されるからだ。
今年の秋、スタンフォード大学に入学を果たした知り合いのお嬢さんは、成績はオールA、ピアノと水泳で課外活動を頑張り、さらに学校のボランティアのクラブでせっせと奉仕時間を蓄積したと話していた。物事にコツコツと取り組むニナは、これまで通りの成績を維持できれば大学進学は夢ではないと思うが、ネックはおそらくボランティアの時間! ボランティアとは本来、人の役に立つための活動なのに、大学進学のため! と必死になるのは本末転倒かもしれないがそれが現実だ。もちろん、奉仕することで親としては子の人間的な成長も期待している。
学校に頼るのではなく、何と親たちで組織を立ち上げ活動を続けたママ友がいる。Y子さんを含む3人が発起人となり、子どもたちが高校のフレッシュマンの時に設立した。最初、メンバーは26人だったが、3年後には65人になった。保護者も含めると160人。
彼らが取り組んだのは教会でのホームレスへの奉仕活動や地元の小学校でのイベントのサポートなど。また障害者が参加するスポーツの大会では、応援団として会場で声援を送ったこともあるという。どの活動に参加するかは自由意志で、担当メンバーがインターネットで収集した情報をもとに、ソーシャルメディア上で求人募集中の奉仕活動の一覧を掲示する。希望者は登録し、奉仕した時間を記録に残す。
そして毎年6月に、奉仕時間に応じて、ゴールド、シルバー、ブロンズの賞を授与する。組織を立ち上げたのは母親たちだが、これらのプログラム運営は全て高校生のメンバーたちが行ったそうだ。
Y子さんのお嬢さんのMさんが年間でボランティアした時間は平均50時間。ほぼ毎週1時間は何らかの活動に従事していたことになる。そしてこの50時間がゴールド賞受賞の基準にもなっている。ちなみに年10時間以下のメンバーは除名処分だとか。よって意識が高い子どもたちだけが残ることになる。
自主性が芽生えた
ボランティア以外に彼らの活動のメインイベントに専門職の話を聞くというものがある。私もY子さんに「取材で会った専門職の人を紹介して」と頼まれたものだ。話をしてくれたのは獣医、心臓専門医、公認会計士、ディズニーのグラフィックデザイナーなど。彼らはキャリアにかける情熱を語ることで子どもたちの将来にヒントを与えてくれたようだ。もちろん、専門職の人々もボランティアで話をしてくれた。
さらにメンバーたちは、大学ごとに希望者を集めて志望校のキャンパス見学ツアーも実施した。必要な車の台数を算出し、保護者がドライバーとして出動したそうだ。
これらの活動を経験した後、Mさんはカリフォルニア州立大学に晴れて合格した。母親のY子さんは「この活動を通してMには自主性が芽生えた。以前は何でも私に相談していたのに、自分で決めて行動に移すようになった」と話した。
さて、ニナだ。ある日、学校からLINEで「今日、クラブに入部したよ。麻雀と美術部」と知らせてきた。全然、私の言うことを聞いてない!
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