昨年の今頃も、 ヨーロッパ各国を取材と視察でウロウロしていたが、今年もまた同じ季節がやってきた。近年は、春先と晩秋をヨーロッパで過ごすことが多くなっている。本来であれば、ひと月おきに欧州というのが好ましいのだが、ニューヨーク時代と違い、サンフランシスコから欧州は遠い。そこで年2〜3回ずつ“まとめて”長期滞在することになる。
3月は世界のワインビジネスが結集するプロワイン(Prowein)という催しがデュッセルドルフで開催される月だ。各国から総計7千のワインブースが出展する超度級のイベントで、業界人と3日間、張り付くことになる。普段なかなか会えない人でも、会場で捕まえることができて便利だ。この季節の北半球は、畑もお蔵も静かで、イベントにはもってこいの時期である。
本当なら、 収穫が始まっている南半球(南ア、オセオニア、南米)へ、取材に行きたいところだが、今回も大人しくヨーロッパに滞在することにした。世界のワインを一堂に試飲できるプロワインはとても効率が良いのだ。気になるワインがあれば 、その場で直接オーナーに面談を取り付けたり、醸造家に会いに行く算段ができる。その為に、イベントの後の一週間は、予定を入れていない。誰に会いに行くかは、会場に行かなければ分からないからだ。
その合間には、ヨーロッパ各国で行われるマスターオブワイン(MW)の強化合宿やゼミナールがある。現在(3月初頭)イタリア南部の中心都市ナポリに来ているが、近隣の高名ワイナリー で、MWによる試飲と理論の講義を3日間受ける。昨年はスペインのリオハで出席したが、出席者はほぼ全員がスペイン人であった。今回はイタリア人が圧倒的に多いのであろうが、MWのプログラムはイギリス主導のため、すべて英語で行われる。とはいえ、訛りのきつい出席者の英語に悩まされるだろう。私達MWの候補者(正しくはStudentと呼ばれる)は、業界の中枢で色々な仕事をしていて意見交換も大変刺激的なのだが、北米がワイン教育者やライター中心とすれば、ヨーロッパはワインメーカーや流通業者が多い。カリフォルニアのワインメーカーとはひと味違う彼らとの交流が楽しみである。
この後一旦ロンドンに戻り、世界的なワインの権威であるマイケルシュースター氏に利き酒の手ほどきを受ける。同氏はワインテイスティングの大家であり、ヨーロッパで生活をしていない(というか、アメリカ嗜好の)筆者にとっては、自分の味覚(特にワインの利き酒)がズレていないかを調整する絶好の機会である。その足で、今度はパリに短期滞在して、主なワインバーなどで米国ではなかなかお目にかかれない銘柄を試飲。そしてやっとドイツに向かい、プロワイン入りだ。会場でもMWの一日ゼミナールがあるが、そちらはワインライターや大手の流通業者が多いはずだ。その後は、前期の通り、めぼしいワイナリーを訪問し、最後にまたロンドンに戻る。勿論、別のMWに3日間缶詰で、びっしりとしごいてもらうために。こうして3月を、仕事と勉強に没頭するためヨーロッパで過ごすが、その間も締め切り記事や、顧客に依頼されたリサーチやリポートは待ってくれない。かくして丑三つ時のホテルの部屋で、はたまた移動中の機内や車内で、こうして原稿を書く羽目になる。
ふと気がつくと、3月の誕生日をまたまた一人で過ごすことになる。昨年はたまたまボルドーにおり、誕生年のワインを見つけて、 自分へのギフトとして自宅に1ケース送った。さて今年はドイツで生まれ年のリースリングでも探すかな、、、。
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