2017 知っておくべき
アメリカ移民法最新事情
- 2017年6月1日
- 2017年6月号掲載
トランプ新政権を迎えて半年。アメリカにさまざまなビザ資格で滞在している私たちにとって、移民法の行方は非常に気になるところだ。そこで、永住権、駐在ビザ、投資ビザ、専門職ビザといった種類別に、移民法のプロフェッショナルである弁護士に対して「保持者への注意事項、申請者へのアドバイス」を聞いた。
永住権を失効させないための注意点は?
質問者:永住権保持者
取り消されることがある特権
今後、帰化申請が厳しくなる可能性も
回答者:Aina Law Officeミチコ・ノーウィッキ弁護士
2017年1月、トランプ大統領が就任した1週目に、移民と国境安全に関する以下の3つの大統領令が発行されました。
•アメリカ国内の公共安全の強化 (2017年1月25日)
•外国テロリストから国家を保護 (2017年1月27日)
大まかな政策としては、難民の一時的入国停止、指定されたイスラム圏7カ国出身の国民の一時的入国禁止、1万5千人の国境警備員の増加、サンクチュアリシティー(聖域都市)と呼ばれる保護地域への補助金停止、およびアメリカとメキシコの国境の壁の建設を含みます。これらの大統領令は、アメリカの移民の新しい大勢を描いていると言えます。
アメリカ国内外の永住権(グリーンカード)保持者への影響も懸念されます。これまでのトランプ政権による移民法政策は、グリーンカード保持者を含む特定のグループを保護するような扱いはしていません。また、大統領上級顧問のスティーブン・バノンは、女性、イスラム教徒や黒人に対する批判的なコメントが多く、白人至上主義者だと批判されています。バノンは国家安全保障会議のメンバーからは外されましたが、政権内の方向性により国は更に分裂され、閉鎖的な法案はグリーンカード保持者や移民は自分たちがこの国の人間ではないと感じる結果となっています。
長期間の国外滞在には
再入国許可証の申請を
永住権はアメリカに住むことができる特権ですが、取り消されることもある特権です。凶悪犯罪や暴力犯罪を犯したグリーンカード保持者は永住権を失い国外追放される可能性があります。トランプ政権は犯罪を犯した移民を追放することを約束していますが、まだ具体的にどのような政策を取るのかは未定です。しかし、これまでの大統領令の内容によれば飲酒運転での逮捕でも国外追放とされる可能性はあります。
グリーンカード保持者としてアメリカに長い間暮らしている方は、アメリカが故郷であり、自分が市民であるような感覚を持っている方もいます。しかし国外追放のリスクがないのは市民のみであり、何十年もこの国に暮らしているグリーンカード保持者でさえ、国外追放の対象となる可能性はゼロとは言えません。
そのうえ、トランプ政権により、帰化申請がより厳しくなることも考えられます。トランプ大統領は長い間、帰化申請について批判してきました。また、選挙活動中には、2013年4月に起きたボストンマラソンの爆破事件の犯人であるチェチェン系の兄弟がアメリカ市民権を得ていたこと、さらに2015年12月のサンバーナディーノ乱射事件においてクウェート出身でアメリカ籍へ帰化した犯人の関与についても触れています。昨年末に起こったオハイオ州立大学の襲撃事件の容疑者は、ソマリア難民でグリーンカード保持者でしたが「私たちの国にいるべきではなかった」とTweetしています。帰化申請についての具体的な立案はまだありませんが、帰化申請の資格要件を増やすことで帰化プロセスが厳しくなることが予想できます。例えば帰化申請の申請資格としてアメリカ国内での居住期間を延長するとも噂されています。また、選挙中にトランプ大統領は家族ベースの申請を廃止し、雇用ベースを重視する移民制度の導入の可能性についても述べていました。
最後に、グリーンカード保持者が注意すべきこととして、今後の出入国審査が厳しくなることが予想されるため、国外に長期間滞在する場合は出国前に再入国許可を申請しましょう。それにより、アメリカを長期不在にしても永住権を放棄する意思はなしとされます。そして、アメリカ国外に最大2年間滞在しても通常の入国審査のみで、他に問題がなければ再入国できるはずです。
Aina Law Office
ミチコ・ノーウィッキ弁護士
888-917-2456
www.ailovisas.com
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