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【ニューヨーク不動産最前線】
テナント保護法の新たなルール
- 2020年2月16日
昨年の6月に成立したニューヨーク州のテナント保護法の一環として、今年の2月から新たに「テナントは賃貸物件の仲介手数料を払わなくて良い」とするルールが施行されることになりました。
賃貸人(オーナー)がテナントを探す際にブローカーを使う場合は、これまではテナントがブローカー・フィーを負担するのが通例となっていましたが、この法令の施行により、今後はオーナーがブローカー・フィーを負担することに決まりました。ただし、賃借人(テナント)が直接不動産ブローカーを雇う場合、賃借人はそのブローカーにフィーを払うことになります。
NYのブローカーフィーを誰が払うかというルールが法令で決められたのは、実は今回が初めてです。これまでは、マーケットによってオーナーとテナントどちらが払うかというのが自然に別れていましたが、マンハッタンの場合は基本的に常に需要の方が勝っていたため(貸し手市場)、自然にフィーはテナントが払うというのが通例になっていました。
今回のテナント保護法の施行によって賃借人の負担が減るということで、賃借人はもちろん、メディアもこの法令を歓迎するムードに溢れています。果たしてそうでしょうか。
実はこの法令は、ブローカー・フィーのみならず、物件申込金、テナントのクレジットチェック・バックグランドチェックフィー等もオーナーが負担することを決め(テナントが負担するのは上限20ドルまで)、かつオーナーが預かることのできる敷金の金額も上限を設定しています。これまではクレジットヒストリーが良くない場合は、オーナーは敷金の積み増し等でリスクをカバーしていたのですが、それもできなくなりました。
オーナー側としては当然、これらのエクスペンスやリスク回避分を家賃に上乗せすることが予測されます。それによって家賃が値上がりするのは必至です。長期で見ると、最初にブローカー・フィーや申込金等を支払っても、毎月の家賃が低ければ総額で支払う金額はそちらの方がお得という結果になります。
実際にこれまでもNO FEE Apartmentというブローカー・フィーや申込金なしの物件はたくさんマーケットに出ていたのですが、やはりFee Apartmentに比べてレントは20%程度割高でした。ただし、初期費用が抑えられるため、賃貸期間が最初から決まっているテナントにはメリットがあります。テナント側がどのタイプの物件を選ぶか選択肢がありました。
今後はすべてフィー無しとなり、一見テナントが保護されているように見えます。しかし実際にはすべての物件のレントが値上がりし、かつテナント側の選択肢もなくなって、誰も得をしないことになるのではという気がします。
※仲介手数料支払いに関する法令については、2月10日時点でニューヨーク不動産協会がNY州に対して規制の差し止めを要求。州の裁判所はこの規制について一時差し止めを命じた。
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