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教育 - 日本の教育に取り入れたいこと(後編)
文/在米日本人フォーラム(Text by Japanese Forum USA)
- 2017年6月1日
プレゼンテーションの苦手な日本人、インタビューされたら多弁なアメリカ人、この差は一体どこから?
2. ノーベル賞を受賞された日本人の教授のお話
教育制度の提案の補足になると思い、奨学金と特進に関係するお話を紹介します。
私の家の近くにノーベル賞を受賞された日本人の教授がおられるのですが、そのお宅におよばれした際に、教授の生い立ちに始まり色々と伺った話の中で、教育に関して次のようなことをお聞きしました。
(1)奨学金
その教授は、日本におられた学生時代(昭和30年代)は経済的にかなり厳しい状況にあったらしいのですが、大学三年生の後期から卒業するまでの一年半、ある企業から奨学金を受けられたそうです。
当時の企業の初任給が1.8万円位に比して、その奨学金の額は1.5万円で、それまでの生活とうって変わって裕福な生活ができるようになり、それはありがたかったとおっしゃっていました。
大学卒業後の行き先を決定するのに、奨学金を受けた会社に入社すればその返済が不要なのでその会社に入社されたそうです。
アメリカの大学は、優秀な学生には大学自ら奨学金を供与しています。最優秀の学生には学費全額(Full Tuision)を供与というケースもあります。その学費はトップランクの大学では5万ドル、時には10万ドルと言った額になります。奨学金の規模の大きさは日本とは比較にならないとのことです。
アメリカでは、それらの奨学金の資金源は決して国に依存しているのではなく、大学の政治力によって企業や個人からの寄付によって調達されています。従い、大学の学長は、国などの官のみならず広く企業や個人からの資金調達の能力に長けた人でなければなりません。大学もまた学生の採用条件に大学の将来にわたって貢献しうる人材を採用するということがうなずけます。日本も若い世代が思う存分勉学に励めるよう奨学金制度の充実させることが一つの要件だとおっしゃっていました。
(2)特進及び特殊教育
その教授は、小学校からずっと人より一年早く学年が特進だったそうです。戦前は普通に行われていたらしいのですが、戦後になって特例は認めないという新制の教育制度の壁が厚く、当教授の場合、高校入学時に年齢不足としてなかなか受諾されなかったらしいのですが、担任の先生が方々に働きかけ特進のまま高校に入学され、そして大学も人より一年早く入学されたそうです。ところが大学二年生の時に健康を害されて一年留年せざるを得なくなって、特進がふいになってしまいみんなと同じになってしまったとのことです。
この特進の制度はアメリカでは時々話を聞きます。昨年、確かハーバード大学に15歳で入学したというニュースが報道されていました。それと優秀な学生は高校在学中から大学のクレジットをとり始めることもできます。
日本の現在の教育制度は、「おちこぼれ」を作らないことが優先され、生徒全員に平均化したレベルの授業しかやらないと聞きます。将来、日本からノーベル賞受賞者をもっと増やすためには、天才は天才としての特進もあれば特殊学級もあるといった柔軟な教育制度を一考すべきでしょう。
ただし、この提案は、優秀な人材に対する特別な教育及び処遇を優先することを求めるものではありません。あくまで、全ての人に共通の教育の機会を与えるという基本方針を遵守した上で、有能な人材には更なる能力を伸長させる機会を付加的に提供することを提案するものです。
(3)ノーベル賞から見た教育の再検討
この教授のお話ですが、ノーベル賞の歴史は約120年で、受賞者が約1,000人、そのうち約半分がアメリカで、日本は約20人、近隣の中国は反政府として糾弾された小説家がただ一人、韓国はいまだ受賞者無し。中国から科学・化学のノーベル賞受賞者が生れないのは、学術関連の制度が悪いとおっしゃっていました。
優秀な学者が数多くいるにもかかわらず、学者として成功すると学術、教育関係の組織のトップとなってしまい、学究がおろそかになり政治家になってしまうからだと。しかし、これからの中国は大きく変化し、ノーベル賞の受賞者を多く輩出するようになるだろうとおっしゃっていました。
なぜアメリカがそれだけのノーベル賞受賞者を生み出せるのか、そのファウンデーションがどのようなものかを研究すれば、日本の教育の在り方を考える上で大いに参考になるはずとのことでした。
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