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JINS Eyewear US, Inc.
アメリカのビジネスは、今
- 2018年10月25日
今、アメリカのビジネスシーンはどうなっているのだろう?
困難をどう乗り越えたのか。成功の鍵はどこにあるのか。
キーパーソンに、アメリカでのビジネスのヒントを聞いた。
サンフランシスコに本社を構えるJINS Eyewear US, Inc.のプレジデントMario Arai氏に話を聞いた。
アメリカ進出
JINSは2001年に日本でメガネ事業をスタートし、2010年に中国に進出しました。アジアは経済が成長していることもあり、ビジネスは順調に拡大していきました。その中で、世界で成功するという次のステップを考えた際、多様な人種と文化が入り混じっている場所で良い感触を得ることができれば世界どこにいっても通用するようになるのではないかという意見が社内でまとまり、「人種のるつぼ」であるアメリカ進出が決定しました。
私はJINSのアメリカ立ち上げの第一陣として、2014年に渡米しました。ゼロの状況からのスタートでしたので、まず「会社を設立する必要があるのか?」「法律はどうなっているのか?」「そもそもアメリカのどこに拠点を置くのか?」というレベルからの話で、しなくてはいけないことが山程ありましたね。(笑)
また、店舗を構えるか否かも論点でした。競合がひしめき合っているこのアメリカで、他社に出来ずJINSにしか出来ない「30分でメガネができる」という強みを活かすために、店舗で直接販売するべきだという結論に至りました。もちろん家のパソコンでゆっくり選びたいというニーズがあることも理解していますので、オンラインショップも同時に立ち上げました。
日米のビジネスの違い
出店を決めて、そこから実際にオープンするまで1年かかりました。理由は建築です。アジアで新店舗を開く際は遅くても3,4ヶ月で完成しますが、アメリカで工事をするとなぜか短くても7ヶ月かかってしまうんです。予想より遅れることが多く、街中でも「オープニングサマー!」という看板が秋になっても貼ってあるなんてことがよくありますよね(笑)
1つの理由は、許可が厳しいことです。行政の担当者が調査に入るのですが、どこを指摘されるか見当がつかない上、担当者によっても言うことが異なるなど難儀させられることが多いです。2つ目は決められた図面にしたがって全ての工事が進んでいきますので、想定外の変更などがあるたびに図面変更し、サインをするという作業が必要になる点です。日本では「この部分が上手く合うようにちょっと直しておきました!」なんていうこともありますが、アメリカでは図面に書いていないことはやってくれません。3つ目は、都市部は景気が良く至るところで建設が行われているため、人手と資材が不足しており、思うように工事が進まないようです。こうした事情はアメリカに来て、実際に動いてみるまで分かりませんでした。
アメリカでのマーケティング
知名度の広がり方が他の国に比べて緩やかという点が、アメリカでマーケティングをしていて感じることです。2015年にオープンした1号店は、3年経った今でも売上が伸び続けていますので、じわじわと広がっていくという印象ですね。
アメリカは日本のような全国を対象とする「マスメディア」という概念が強くありません。もちろん、スーパーボールの一枠3億円のテレビ広告を出すとなると話は別ですが、相当な大手企業でないと難しいですよね。ですので、地域のイベントに出展していくなど草の根の活動が必要になってきます。
また、商品を買ってくださった方にどのようにJINSを知っていただいたのかを伺うと、一番多い回答は「口コミ」なんです。こうした調査を経て、お店での接客とサービスでお客様に満足していただくことが最大のマーケティングだと分かり、よりスタッフのサービスにフォーカスしました。その結果、ご購入いただいたお客様から口コミで家族や友人へ徐々に広がり、ゆっくりとアメリカのコミュニティーに受け入れてもらうようになりました。
特殊な国「日本」
海外に出て、日本がいかに特殊な国であるかということに気が付きました。日本、中国、台湾、香港、フィリピン、アメリカなど、国や地域ごとの売れ筋商品を見てみると、日本だけ全く違うラインナップなんです。中国で売れた商品はアメリカでも売れます。アメリカで売れたものは中国でも売れます。不思議なことに日本だけは別なんです。(笑)日本に居ると他の国が特殊に見えますが、世界に出て日本を見てみると、いかに日本が特殊な国かが分かりました。
海外進出の際は、日本で上手く行ったものをそのまま持ってくるというよりも、残すのもとローカライズする部分を見極めて進めていくことが大切ではないでしょうか。
今後の展望
1号店で店頭接客をしていた時「このメガネの色が、私が持っている口紅の色と同じで嬉しいの!」と、弊社のメガネを試着しながら鏡に向かってお化粧をしているお客様がいらっしゃいました。このお客様の様に「メガネをファッションの一部として楽しんでいいんだ!」と気が付かれた時のお客様の目の輝きが、私はとても好きなんです。
アジアや欧州、北米という枠を取り除いて、どんな国の方にも「メガネをライフスタイルの一部として楽しむ」という概念は受け入れていただけるという感触があります。ですので、世界中の方にその目の輝きを感じて欲しいと思っています。そのゴールに近づくために、今は様々な文化的背景や価値観の異なるお客様に受け入れてもらうにはどうすれば良いかを試行錯誤している段階です。
JINSのバリューを世界に届けたいですし、待っているお客様がいらっしゃると信じています。
■住所:151 Powell St. San Francisco, CA 94102
■オンラインストア:https://www.jins.com/us/
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