心の病 相談室
- 2017年10月1日
- 2017年10月号掲載
心身ともに健康な生活を送りたいと誰もが願うはずだが、意図せずにうつや不眠症、パニック障害に悩まされたり、日本と同じ自分でいられない居心地の悪さを感じたり、さらにそこからアルコールやドラッグに依存してしまったりする人は少なくない。そこでその悩みを解決するためにはどうしたらいいか、専門家に Q&A 方式で聞いた。
Q.1 在米日本人が発症するうつ病は、どのような経緯で陥るケースが多いのでしょうか?A.1 人間は環境の変化によってストレスを受けます。短期の旅行なら楽しめるこれらの変化も「生活」となるとこれらのストレスが心と体に大きな負担となり長く続くとうつ病にもなりかねません。
回答者:ひつもとみわ先生
私のオフィスに来られる方々では次の理由が目立ちます。
現実とのギャップ
「英語がすいすい上達して、アメリカ人の友だちと仲良くなる」「前任者から引き継いだプロジェクトの結果を出して上司に認められる」など、渡米前に希望していたことがなかなか期待通りにならないと徐々に悩み希望と現実のギャップにストレスを感じ始めます。このギャップが大きいほど「自分はダメな人間だ」「自分は努力がたりない」などますます自身を追い詰めていき、うつ状態になる方も少なくありません。
言語や文化の違いによる環境の変化
使用言語の変化、住環境の変化、現地社員とのコミュニケーションのとり方の変化、などと特に最初の1年は多くの変化に対応していかなければなりません。「朝9時予定のケーブル取り付けで、家で待っていたのにお昼になっても誰からも連絡がありません」「二度もドクターオフィスに電話をしたが未だに折り返しの連絡がありません」「なんといい加減な社会なんだ!!」と、ことごとくアバウトなアメリカ社会に怒りをおぼえる人もいれば、便利で美味しいコンビニ弁当がなく、近くのレストランやスーパーに行くにも車を運転していくこの不便を痛感してホームシックになる人もいます。これらの小さなストレスが蓄積されて、大きなストレスになってしまうのです。
サポートシステムの不足
ここまで、在米日本人で多いパターンをご説明したのですが、百歩譲って、このようなことが日本でも起こったとしましょう。いきなり性格の最悪な上司が人事異動でやって来た、たまたま見つけたドクターオフィスが最悪にいい加減な所だった、ということも日本にいてもゼロではないですよね。しかし、この場合、もしあなたが日本にいるなら、同僚や学生時代の友だちと飲みに行き話を聞いてもらったり、カラオケにみんなで行ったりして、ストレスを発散しやすいですよね。海外在住者はこのようなサポートが不足しているため、ついつい自分の中で溜め込む傾向にあり、これもうつ病になる要因だと思います。
根っからの日本人気質
一般的に真面目で几帳面というのは日本社会では特に大切で出世にもつながる気質なのですが、なぜかこのタイプの方は渡米後1年未満でうつっぽくなる傾向にあります。裏を返せば考え方の柔軟さと同時に、少しぐらいアバウトな方がアメリカ生活向きなのかもしれません。
うつは様々な要因・組み合わせによるところが大きいです。その人の置かれた状況だけでなく、性格からくるものや遺伝的要因などが複雑に絡み合いながらうつ病を患うこともあります。
うつ病の自己診断テスト
合計点の判定
39点未満 正常。ただし30-39点はストレス過多状態にある。時々、テストを受けてみることが必要。
40-47点 軽度のうつ状態。専門医での早めの受診を。
48-55点 中程度のうつ病の疑いあり。専門的な治療が必要。
56点以上 重度のうつ病。治療が早急に必要。
資料提供 LA Counseling(Dr. Miwa Hitsumoto)
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