Vol.1 テキサスの歴史を語り継ぐ
サン・アントニオ伝道施設群
− テキサス州 −

文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito)
写真/NPS Photo(Photos by NPS Photo)

世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2018年1月現在、167カ国で1073件(文化遺産832件、自然遺産206件、複合遺産35件)が登録されている。

その壮大さと美しい装飾から“Queen of the Missions”とも呼ばれたサン・ホセ伝道所

アメリカの世界遺産を紹介していく新連載の第1回は、2015年に認められた米国内で一番新しい登録遺産「サン・アントニオ伝道施設群」。テキサス州南部に位置する都市・サンアントニオは、18世紀のはじめに入植したスペイン人宣教師によって開拓のために伝道所が多数建設され、形成された町だ。今回登録された伝道施設群には、スペイン人が持ち込んだカトリック文化と自然崇拝に基づく先住民(コアウィルテカ族)の文化の融合が見られる。先住文化でもスペイン文化でもない、新たに創り上げられた独自の文化の発展に貢献した遺産として、高く評価を受けたのだ。

構成資産は、サンアントニオ川に沿って約7.7マイルの範囲に点在する五つの伝道所と、そこから南東に30マイルほど下った所にある関連施設。これらは個々でありながら連携が取られており、伝道目的以外にコミュニティの形成や外部からの防衛活動の役割も兼ねた複合施設とされ、農場や牧場、住居、教会、穀物貯蔵庫、外壁、水利施設なども資産に含まれている。伝道所にはカトリックのシンボルと先住民のデザインが融合した装飾などもあり、ここでしか見られない独特なデザインはとても興味深い。

まずは、ダウンタウンに位置するバレロ伝道所へ。「アラモ伝道所」とも呼ばれるこの施設は布教のために設立されながら、1836年にはメキシコ領からの独立を掲げてテキサス軍とメキシコ軍がまさにこの地で衝突し、「アラモ砦」の名でも知られている。石造りの白い建物は町のランドマークにもなっており、内部ではこの町の歴史を物語る資料や展示物を見ることができる。

エスパーダ伝道所の正面には、歴史を感じさせる鐘が三つ並ぶ

少し南へ下ると、サン・アントニオ・ミッションズ国立歴史公園にたどり着く。ここには世界遺産の構成資産である四つの伝道所が含まれる。公園の北側に位置するコンセプシオン伝道所は、とてもきれいに保存されている施設。今となっては建物の外観は色あせてしまっているけれど、全盛期には色鮮やかな幾何学模様で覆われていたそうで、内部では当時描かれたフレスコ画を今も見ることができる。ビジターセンターと隣接しているサン・ホセ伝道所は、この辺りでは一番規模の大きな施設。宿舎や穀物庫、作業場、教会などを併設しており、石造りの建物に施された草木や花、天使などをモチーフにした緻密な彫刻が美しい。さらに南へ下り、真っ白な外観のサン・フアン伝道所と、ほかの3カ所よりも歴史の古いエスパーダ伝道所も訪れていただきたい。時間に余裕があれば、そこから30マイルほど南にある関連施設ランチョ・デ・ラス・カブラスにも足を延ばしてみよう。

公園にある四つの伝道所では、250年以上もの時を経て今も現役でミサが行われているというから驚きだ。各伝道所ではスタッフによる無料のガイドツアーも実施されている。歴史や見どころを詳しく教えてくれるので、参加してみてはいかが。

二つの大きな塔が目印のコンセプシオン伝道所

遺産プロフィール
サン・アントニオ伝道施設群
San Antonio Missions

登録年 2015年
遺産種別 世界文化遺産
https://www.missionsofsanantonio.org

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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