- Home
- Vol.36 伝統を守り伝える先住民の聖地 ピマチオウィン・アキ − カナダ マニトバ州・オンタリオ州 −
Vol.36 伝統を守り伝える先住民の聖地
ピマチオウィン・アキ
− カナダ マニトバ州・オンタリオ州 −
写真提供:Permavultur/flickr
- 2023年10月4日
- 2023年10月号掲載
世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2023年1月現在、167カ国で1157件(文化遺産900件、自然遺産218件、複合遺産39件)が登録されている。

カナダの中部、マニトバ州からオンタリオ州にかけて約290万ヘクタールに広がるピマチオウィン・アキは、先住民アニシナアベ族が約7000年にわたって自然と共存してきた文化的景観が見られる場所。ここにはアニシナアベ族の4つのコミュニティが今も存在している。“ピマチオウィン・アキ”とは、彼らの言葉で「命を与えてくれる土地」という意味。アニシナアベ族は創造主からの贈り物に敬意を表し、アキ(あらゆる生命)を尊重し、他者との調和を保つという「ジ・ガナウェンダマン・ギダキイミナン(Ji-ganawendamang Gidakiiminaan)」(“土地を守る”という意味)の文化的伝統のもとで長い年月の間、生活を維持してきた。
4つの河川の水源地となっているピマチオウィン・アキには、川、湖、湿地帯、針葉樹林といった豊かな自然が広がっている。アニシナアベ族はこの地の利を生かして釣りや狩猟、採集を行いながら生活を営んできた。彼らの居住地や移動ルート、加工場所、神聖な儀式場といった生活拠点は広範囲に点在しており、それらを水路によって結ぶことでネットワークを形成している。この無限に広がる複雑なネットワークを駆使して自然と共存しながら、伝統的な狩猟採集生活を育んできたのだ。
人と自然の共生を大切にしてきたアニシナアベ族の世界観では、自然の中に存在する物体にアニマシー(生物性)を宿らせることで、季節や年月を通してこの環境下にある人間の存在に意味を与えている。この価値観や信念を7000年以上にわたって守り伝えてきたアニシナアベ族の存続は、先住民の文化的景観および伝統を示す類まれな証拠として、また変化に富んだ自然環境や生物多様性を尊重し維持してきた点でも高く評価され、自然と文化の両方の価値を認められた世界複合遺産として2018年に登録されている。
アニマシーの森へ
ピマチオウィン・アキにはアニシナアベ族が今も暮らす4つのコミュニティのほか、アティタキ州立公園とウッドランド・カリブー州立公園がある。4つのコミュニティでアニシナアベ族と実際に交流することもできるが、特に観光客に人気が高いのは、2つの州立公園。ここには川や湖、湿地帯、針葉樹林が広がっており、釣りやカヌー、ボート、ラフティングといった水上アクティビティが楽しめる。また、ハイキングやバックカントリーキャンプなども人気で、各種アクティビティはガイドやツアーオペレーションをつけることもできる。
自然との共存で生態系が維持されてきた一帯では、北方系動植物のコミュニティが今も守られている。一歩足を踏み入れれば、ウッドランド・カリブーやムース、ブラックベア、オオカミ、ハクトウワシといったアイコニックな野生の動物たちに出会えるかもしれない。
遺産プロフィール
ピマチオウィン・アキ
Pimachiowin Aki
登録年 2018年
遺産種別 世界複合遺産
https://pimaki.ca
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします