海外教育Navi 第47回
〜思春期の子ども − 帰国する際に親としてできること〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.思春期の子どもを連れて帰国しますが、友人関係が不安のようです。親としてできることを教えてください。

思春期は人生のなかでもっとも「むちゃくちゃでわけのわからない」時期です。心細さも冒険心も荒ぶる心も恐れや不安も抱えながら、大人になるための武者修行へと飛び込んでいきます。そんな時期でのご帰国はさぞご心配なことでしょう。

子育てはルンバのように

まずは思春期の子どもの姿と親のかかわり方がシンプルにわかる私の恩師のユーモラスなことばをご紹介します。

「子どもには、ルンバ(お掃除ロボット)のようにやりたいことをやらせて、あちこちぶつかって自分で気づかせてあげてください。何事も『のびのびワクワク』でないともったいないんです。『こうだ、ああだ』と経験のある人が言っても夢がつぶれるし本人の経験が浅くなります。助言は本人がほんとうに聞きたいときだけにしてみましょう」

ルンバはこちらを忖度することなく自分で好き勝手に動き回り壁にぶつかり暗礁に乗り上げたりもします。ルンバが自由に動けるように床を整頓しておくことも大切です。

もしも子どもを急き立てて親の思い通りに動かしたくなったときは「ルンバ」を思い浮かべて深呼吸。「なぜ思い通りにさせたいのか」「親が不安になっていないか」と、自分に問いかけることで少し距離が取れます。

親の不安を子にぶつける

Aさんは中学2年のときに帰国して公立の中学校に通っていましたが、友達との関係がうまくいかず不登校に。本人はなんとか学校へ行かなければと思うのですが、足が前に進まず玄関から先へ出ることができません。学校へ行けない自分はこの先どうなるのか不安でいっぱい。でもその気持ちを両親に打ち明けることができませんでした。両親は学校に行けなくなったAさんに「アメリカでは元気だったのに、人に何て言えばいいの?」「学校に行かないとあとで困るじゃない」と不安やいらだちをぶつけていました。Aさんはそのことばの奥にある親の気持ちを察してしまうのです。

親の不安はパワフルです。自分の不安に親の不安まで背負い込み、「こんな自分で申しわけない」と感じてしまう優しい子どもなら、心を病んでしまうこともあるでしょう。親も「不登校」という衝撃を受け入れるのに時間がかかっているのでしょうが、子どもには酷です。

俺の子どもにしては失敗!?

親にとって受け入れがたいことを子どもがするときは、親は我が身をふり返って考える必要があると感じています。特に父親は「俺の子どもにしては失敗だった」などと言いがちです。でも突き詰めて考えると「俺の子どもだからそうなった」のでしょう。子どもが受ける傷を考えず、自分の罪悪感をごまかしているかのようです。子どもがそれを聞いたらどんなに惨めな気持ちになることでしょう。

どんなことになろうと「うちの子だから」と見捨てられない関係が親子です。「自分たちを選んで生まれてきてくれた子をがっちり受け止めて、どう生きるか」親自身の生き方が問われているのです。

話をとことん聴く

思春期に限らず、子どもとの接し方がわからず悩むご家族も多いと思います。基本は「話をとことん聴くこと」─遠回りのようでいちばん心に寄り添える方法です。親は子のストレスや負の感情を聴くことが苦手。ついつい「気にしすぎ」「そんなこと誰にでもある」「だから言ったのに」などとさえぎってしまいがちです。でも子どもが感じたその気持ちは間違いなく「そこに存在する」のです。わかってもらえなかった感情は「未消化」で置き去りのまま心の奥深くに残り続けます。

多くの精神科医によると「心の病の本質は、『怒り』『不安』『罪悪感』などの負の感情をうまく処理できないこと」にあるのだそうです。

どんな感情も否定されず、本心をさらけ出せる安全な場所が確保されますように。

「そうか、いやだった気持ちをわかってもらえていないって感じたのね?」「そうなんだよ」、そんな会話ができたら少し前進。またもし自分が間違っていると思ったら親も謝る。子どもはそんな姿を見て学んでいきます。

また子どもを対等に尊重しながら、気持ちを伝える話し方がお勧めです。「学校へ行けないと友達もいなくなるし困るよ」ではなく「学校へ行けなかったらしいけど、どう? つらそうね……」と、そっと寄り添う。少しでもよい変化が見えたらそこを肯定し褒める。愛情は表現しないと伝わりません。

→「第48回 〜思春期の子ども − 帰国する際に親としてできること〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員
海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師
つちや みちこ

ライター、海外生活カウンセラー。多文化間精神医学会会員。上智大学卒業。夫のアメリカ駐在で13年間をイリノイ州、カリフォルニア州、ノースカロライナ州で過ごす。3人目の子どもはアメリカ生まれ。帰国後、教育評論家の尾木直樹氏が主宰する臨床教育研究所「虹」の研究スタッフに。子どもたちと体験したアメリカの学校についてまとめた『わくわく学校レシピ』(文芸社)を出版。2009年より海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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