Graphtec America, Inc./高濱宏吉氏
「アメリカで働く」インタビュー

Photo & Text by Saori Yoshida

日本とアメリカの働き方の違いは?
どんな経緯でここに至り、どんな思いをもって仕事をしているのか。
実際にアメリカで働く人へのインタビューシリーズ

カリフォルニア州を拠点にカッティングプロッターを製造販売するGraphtec America, Inc.のCEO高濱宏吉さんに話を聞いた。

事業内容

弊社はグラフテックブランドの業務用カッティングプロッター、計測機器の製造販売を全世界で展開しています。カッターというのは大型プリンターで印刷した図形の輪郭をカットしたり、Tシャツのプリント図柄のカットを業務レベルで行う機械です。また計測器はデーターロガーというデバイスで温度、湿度、振動といったデーター計測記録を行うもので、企業の研究開発室や製造ラインなど現場計測ニーズのあるあらゆる場所で使用されており、自動車、家電業界などで活躍しています。どちらも一般の小売店で見たりする製品ではないので、読者の方にはそんな機械があったんですねという感じかもしれません。

販売網は全世界に展開しており、アメリカは当社現地法人が1979年以来、北米、中南米向け販売をここカリフォルニアを拠点に30年近く継続しています。全社としては欧州、中国、アジアにも拠点を持っています。いわゆる日本の中堅精密機械メーカーで1947年創業と歴史があります。独自技術を駆使してニッチ市場での高い競争力を目標にして地道に頑張っている会社です。

業務用カッティングプロッター

アメリカへ来た経緯

アメリカの前はオランダのアムステルダムにあるグラフテックヨーロッパで3年勤務していまして、こちらへは社命で2年半前に着任しました。個人的な経歴としてはユーラシア大陸はほぼ全地域を経験していましたが、アメリカは仕事では全く来たことが無かった地域で自分でも仕事で来ることはなさそうだなと思っていましたので「最後の大陸」と呼んでいました。ところがまさか中南米も含めたアメリカ全土が担当になるとは・・・正直ノーマークだったわけで、ちゃんと英語を習得しておけば良かったと反省しきりです(笑)

写真のフチを正確に切り抜いていく

日米の働き方の違い

一言で言うと「アメリカはあまり細かい事は気にしない。日本はすごく気にする。」ということでしょうか。これは多分国土の広さの違い、他民族、単民族の違い、豊富な資源国と資源の無い国等々がよく言われるように影響しているんだなと思っています。分かり易く対比するとアメリカはとにかく広い、人の価値観も様々、人と人との距離感がしっかりあって自由な雰囲気がベースにあります。一方日本は平地面積でいうとアメリカのたったの50分の1、なのに人口比は3分の1とすこし少ないだけ。沢山の人が狭い場所で、ほぼ似たような価値観でお互いを見張っている、そんな環境の違いがまずベースにあるように感じます。

ですので仕事の仕方も、エクセルで縦横がぴったり合った資料を作って初めて話を聞く日本式とは違い、まず自分の考えを話す、主張する、その場で何かを一旦決めてしまう。間違いは誤差の範囲なら追求しない。だから日本式の報連相とか、まず資料を準備してとかは、いわゆるマイクロマネジメントに見えてしまうようです。その分成果結果には拘りが強いように思えます。こういう手順でやったからというプロセスの説明は少ない気がします。それと給与については不満があればかなりダイレクトに要求をしてくるのも特徴でしょうか。日本と比べると物価も結構ガンガン上がりますし、デフレで緊縮モードに慣れきっている日本とは根本的に経済のサイクルが違うなと思うことがよくあり、そうしたことも背景にあるのかなと実感するこの頃です。

このように違いは有れど、コミュニケーション取り続けることで、考えややり方が違う事には徐々にお互い慣れてきて、その上で結局それぞれの持分を活かして共通の目標に向かって役割分担をしている、やらざるを得ないというのがここでの働き方ではないでしょうか。

目を凝らさないと見えないほど繊細なカッターの刃

今後の展望・ゴール・夢

現実的には今年やっとリーマンショック前のレベルに戻れそうなので、まずはそこに集中したいです。また今年は大型フラットべッドカッターという新商材に取組む年ですので是非ものにしたいと思っています。先にも言いましたが歴史がある会社ですので、既に諸先輩がこれまで着々と積上げてきたブランド価値の大きさを折に触れ感じることがありまして、少しでもそれを肉厚にしてまた引き継いでいくのが私の使命だと思っています。世の中が変わると外に向かって設定していたゴールも変わるので特にこれがゴールというものはありませんが、根がストイックなスポーツマン系なので、今の現地法人も筋肉質でタフな健康体質にしたいなと常々思っています。若返りはちょっと難しいかもしれませんが(笑)それが夢でしょうか。

道路標識で使われるサインも

アメリカで働きたい人へのエール

アメリカは何をやるにもダイナミックな国だと思います。国土は大きいし、経済規模も単一国では世界一です。以前欧州で勤務していたのでのでつくづく思うのは、EU全体だとアメリカとGDPも双璧なのですが、欧州はそれが30カ国以上細切れで言葉も文化も制度も違うのに対し、アメリカは州ごとの違いはあれ基本的に言葉も制度もワンフォーマットであるところです。これがこの大アメリカにしている最大の要因だと感じています。商品を企画するにしても、販売を目論むにしても、このワンフォーマットが他国に無いダイナミックな結果を生み出し、アメリカで働くだけで欧州の一国や他の一国担当とは全く違う規模感に浸ることができいわゆるスケールメリットということを存分に経験、享受することが可能です。 もちろん仕事や文化の本質はスケールだけで当然語れないわけですが、とにかくスケールを満喫したい方にはもって来いの国ではないでしょうか。 その昔「大きいことは良い事だ ! 」 というCMがありましたが、そのものという感じです。

一方でアメリカにもハードシップは存在していて、外国人のビザ取得、銃社会、高額な教育費等、深刻な社会問題になっているものもありますので、決してパーフェクトではありませんが、ここ20年のIT化の流れをつくり世界的な有名企業を生み出していることを考えると、挑戦して成功を勝ち取る可能性を秘めた国であると思います。西海岸のこのあたりは日本人、その他アジア人も多く、日本人にはスタートアップし易い地域だと感じています。といって、私は本当は日本がそういうポテンシャルのある国であって欲しいと願っている人間ですので、「頑張れニッポン!」で締めさせていただきます。

Graphtec America, Inc.

■ ホームページ:https://www.graphtecamerica.com/
■ 電話:(800) 770-6010
■ 住所:17462 Armstrong Ave. (949) 756-0450 Irvine, CA 92614

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 日本では、何においても横並びが良しとされる。小学校への進学時の年齢は決まっているし、学校を...
  2. Water lily 今年は年頭から気にかかっている心配事があった。私は小心なうえに、何事も...
  3. 峡谷に位置するヴァウリアル滝の、春から夏にかけて豪快に水が流れ落ちる美しい光景は必見。島には約16...
  4. 2024年6月3日

    生成AI活用術
    2024年、生成AIのトレンドは? 2017年に発表された「Transformer」...
  5. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  6. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  7. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  8. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
ページ上部へ戻る