毎回の施術で変化を実感
顧客の笑顔が最高の報酬
New York
森脇 静香
easeNY オーナー
ライセンスドマッサージセラピスト
easeNY
http://www.easeny.com
http://www.nyeasetherapy.com
NYという土地に手応え
若い頃の私は、父が敷いたレールの上を歩いていました。父の紹介で入社した不動産会社でOLをして、自分では何もできないと感じていました。しかし、21歳の時に父が他界したことから、自分の人生を歩いてみようという気持ちになったのです。でも、何がやりたいかも当時は分かりませんでした。それで英語を勉強すれば、将来の可能性が広がるかもしれないと思い、海外に出ることを目標にするようになりました。
そのためにたくさんのバイトをしました。不動産会社に勤務しながら、デパートの販売員、パーティのコンパニオンやバーなどで働き、1991年のゴールデンウィークに、バイト先の先輩が留学していたニューヨークに遊びに来たんです。彼女はすでに日本に帰国していましたけど、残っていた先輩の友人を紹介していただきました。ニューヨークには10日ほど滞在したなかで、ここだったらやっていけそうだという手応えを得ました。
戻ってからは、正月とお盆の2日以外働きました。そして400万円ほど貯め、本格的に渡米したのは1992年3月。渡米数カ月で前の夫とも出会い、彼や多くの日本人の友人に助けてもらいました。苦労という苦労は感じたことはなかったですね。逆に今の方が経営者としての問題に関して、苦労を現実的に感じるようになっています。
マッサージの勉強を始めたのは、11歳の時に受けた手術後に右半身が麻痺してしまったことから、マッサージや鍼を週1、2回のペースで受け続け、長年、私自身の生活の一部だったことが背景にあります。ニューヨークに渡ってから、ある方の手をマッサージして差し上げたら、「学費を出してあげるから、絶対にマッサージの学校に行きなさい」と言われたことがきっかけになり、その後しばらくしてクラスを取ってみたら、楽しくて、そのまま没頭してしまったんです。
さらにそのクラスの主宰だった先生の下で働くようになった後、1999年からはスウェディッシュ・インスティチュートというマッサージの大学に通いました。それまでは東洋式で施術を行っていましたが、そこで習った西洋式をミックスさせて、今のお店で提供しているオリジナルセラピー、ease therapy®を誕生させました。
3カ所のサロンで売上1位
大学で学位を取得した後、同時並行で3カ所のサロンでセラピストとして働き始めました。私の目標としてはすべての店舗で売上が1位になったら、独立して店を構えることでした。そして、9カ月でそれを達成したのです。
肉体的に、また精神的に辛くなかったか? それはなかったです。やらなくちゃいけないからやっていたわけではなく、自分でやりたかったからやっていたんです。独立するために結果を早く出したかった。それぞれのサロンで予約は常にパンパンで、それだけ働くことで私の経験値はどんどん上がっていきました。心が折れたら休めばいいだけですが、私にそういうことは起こりませんでした。
店を開けた当初、施術師は私1人だけでした。働いていたそれぞれの店からお客様が来てくださって、さらに新しいお客様をご紹介いただく形で、顧客数が増えていきました。お店を始めて18年目、クライアントリストの顧客数は3万名です。しかもそれは、途中からデータをコンピュータに残し始めてからの人数です。今ではスタッフの数も10数名になりました。私は今でもセラピストとして現場に出ています。媒体やネットでニューヨーク市内のベストマッサージ店に5回選出されました。
この仕事のやりがいは、1回ごとの施術で結果を実感できるということです。お客様に毎回喜んでいただき、「ありがとう」と何度も言っていただくことで、施術している私の方まで癒されています。たとえばデパートで販売員をしていても、扱う商品すべてを好きでやっているわけではないし、好きな商品を売り切ってしまうと次は何を売ればいいんだろうという気持ちになりましたが、マッサージの仕事はどれだけやっても終わりはありません。楽になっていただくために、お客様には何回来ていただいてもいいのです。
日本人の美徳をアピール
現在はセラピストとして、経営者として、またセラピストの育成を行う講師として過ごしています。今年の6月には東京、白金に隠れ家サロンをオープンしました。これまでも駐在が終わって帰国されたお客様を対象に、日本で年に2回、出張でマッサージを提供していました。当店で学んだ生徒さんが手を挙げてくれたことで、東京でも施術できるようになりました。
これからアメリカで起業したい、夢を叶えたいと希望されている方へのアドバイスとしては、まず、場所によってエネルギーが違うので、自分に合った場所で挑戦すべきだということです。私にはニューヨークが最適でしたが、人によってはサンフランシスコだったりロサンゼルスだったりと、エネルギーが合う場所があるはずです。
そして、私がビジネスを続けてこられた経験から良かったと思えるのは、日本人の美徳を認めてくれるアメリカ人が多いということ。アメリカに同化するのではなく、日本のいいところをアピールすることで認めてもらえる可能性が高いと思うのです。アメリカ人と同じようにやるのではなく、差別化のために日本人の特性を活かして勝負するのがいいと思いますし、それが大きな武器になると信じています。
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