こんな時どうする?
アメリカ生活お役立ちBook〈法律編〉
- 2019年6月3日
- 2019年6月号掲載
アメリカで生活していくうえで、ビザや生活面でのトラブル対処法など、日本と異なる心構えが必要となることも多い。移民法をはじめ、交通事故や結婚・離婚、企業関連のトラブルなど、それぞれの分野で最低限知っておきたい法律の基礎知識や対処方法などについて、専門家が解説する。
移民法最新事情
トランプ大統領が就任してから約2年半。ビザに関連する傾向は日々審査基準が変わるので、移民法弁護士に常にトレンドを確認することが重要になってきました。各ビザにおけるここ1〜2年の最新事情を解説します。
永住権
申請において、大きな変更が二つありました。まず、雇用ベースでグリーンカードを申請する場合は必ず面接を受ける必要があること。次に、米国内でグリーンカード申請をする場合は今まで以上に入念なチェックが入ることです。たとえば、学生として長年アメリカに滞在する人は、出席表など実際に学校に通ったことを証明する書類の提出が求められます。在日アメリカ領事館でのビザ面接で発言したことまで調べられる場合もあり、取得のハードルはかなり上がったといえます。申請から取得までの所要期間は、家族ベースの申請なら1年間、雇用ベースでの申請は2年間ほどです。
永住権保持者が注意すべきことは、意外にも航空会社のカウンターでのチェックイン時です。以前、永住権保持者がグリーンカードの有効期限を勘違いしていて、アメリカへ渡る際の空港でのチェックイン時に、搭乗日がグリーンカードの有効期限日だと気づいたケースがありました。航空カウンターのスタッフが搭乗を拒み、何とか搭乗できるよう説得するのに3時間もかかったそうです。一方、アメリカでは何一つ質問されずに入国できたと報告を受けました。航空会社は、搭乗させる客が無事アメリカに入国できることをアメリカ政府に保証する必要があります。イレギュラーなケースだと搭乗に時間がかかる場合があるので、注意が必要です。
Eビザ・Lビザ
Eビザとは、日米通商条約に基づいた二つのビザ、E-1(貿易)ビザとE-2(投資家)ビザを指します。ここ最近で目立った変更点はないのですが、在日アメリカ領事館でのビザ面接は厳しくなりました。E-1やE-2は基本的に上級管理職に与えられるビザなので、日本の親会社やアメリカの子会社の総売上高や荒利益高に関しての説明、組織上のポジションの必要性の説明を求められることがあります。初めて申請する場合は、在日アメリカ領事館に書類を提出してからビザ取得まで6~8週間ほど。新企業登録が済めば、領事ウェブサイトから予約を取って直接ビザ面接を受けられます。
L(企業内転勤者)ビザの取得条件は、①申請から過去3年のうち、連続で1年間以上を上級管理職、あるいは特殊技能者としてアメリカ国外の関連会社に勤めていたこと、②アメリカ国内に上級管理職か特殊技能職を必要とする企業があることです。ここ1~2年で、書類審査のハードルがかなり上がりました。最近では申請者が行った部下の人事考課のコピーや、部下に仕事の指示を出したメールのコピーなどを申請パッケージに含めることで、認可率を高くしています。申請からビザ取得まで16週間以上かかりますが、1410ドルを支払って特急申請プログラムに加入すれば、20日間ほどで取得が可能です。
Lビザを取得するには500ドルの「Fraud Detection Fee(監査費用)」を支払うので、アメリカの子会社が監査対象に入る可能性があります。トランプ政権によって、ランダムで行われる監査が増えているという報告を聞きます。ビザ保持者や部下スタッフも、監査官からビザ保持者の仕事内容に関してインタビューされる可能性があるので、申請書類には必ず社内で目を通しておきましょう。
H-1Bビザ
8万5000部しか発行されないH-1B(特殊技能職)ビザは、4年制大学の学士号(またはそれに匹敵する職務経験)、あるいはアメリカ大学院の修士号(またはそれ以上)を得た人が申請できるビザです。2017年4月18日にトランプ大統領が署名した大統領令13788号「Buy American and Hire American」の影響により、高度技術者や高給のポジションにのみ利用できるようにプログラムが変更されつつあります。スポンサー企業が本当に高度な技術を必要とする企業なのか、申請ポジションは必ず4年制大学を卒業する必要があるのかを問われるようになってきました。STEM教科を受けている人は比較的安全ですが、そうでない人は以前より厳しい審査を受けることになります。
H-1Bビザは、連邦会計年度が始まる10月1日にスタートがセットされます。申請書類の受理は4月最初の週のみ。発行枠を超える申請があれば、コンピュータープログラムによる抽選が行われます。申請からビザ取得までは5〜6カ月かかります。
企業側は、「なぜ学士号保持者を雇う必要があるか」という質問に、「今まで学士号保持者しかこのポジションに雇ったことがないから」と証明できるようにしておくと、ビザ取得の確率が上がるでしょう。
今後は「今までやってきたもの」だけでは申請は通らないかもしれません。クリエイティブかつ柔軟な考えを持つことが、認可と却下を分ける秘訣になりつつあります。弁護士は重要なビジネス判断のパートナーになるので、実際に会って話してみて、気軽に声をかけられるリレーションシップを築けるような弁護士を探しましょう。
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