第78回 SATにはコツがある?

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

ニナの友人の一人は「SAT1600点満点で1580点を取った。でも教育熱心な母親からは、なぜ1600点を取れないのか、と責められている」らしい。それは気の毒、1580点といえばほぼ満点なのに、と思った少し後、ニナが6月に受験したSATのスコアのお知らせが7月頭に届いた。本人のプライバシーのために点数は書けないが、問題集にせっせと取り組んでいたのに、期待していたスコアでなかったことに親の私は少々焦った。頑張った本人はもっとショックだったようだ。

実はニナとは「SATのスコアが良くなかったら、夏休みは塾に通おう」と前々から話していた。毎年夏は1カ月ほど、私はニナを連れて日本に帰省しているが、今年はシニア直前の夏休みであること、数学のサマースクールに申し込んだこともあり、帰省は見送った。2019年夏は「勉強モード」なのだった。

そこで、SAT強化コースで有名な某塾について調べたら、強化コースは当たり前ながらその時点ですでにスタートしていた。ニナは「途中から通うのは嫌だ。それに、そこに以前通っていたSは、SATのスコアは絶対上がるけど、めちゃくちゃ大変だったって言っていた。私は遠慮したい」と言う。「遠慮」って、目的は大学受験に向けてSATのスコアを上げるためではないのか? しかし、無理強いは良くない。受験するのはニナであって私ではない。

ちなみに、その塾に通って「スコアは絶対に上がる」と証言したSは、早々にSATの目標スコアを達成したそうだ。8月と10月、あと2回受験のチャンスはあるのに「もう受けなくても大丈夫」と言っている。どう考えても、のんびりしていたのは私たち親子。

「どうしてもっと早く」

いずれにしても、何らかの対策は必要だ。その強化合宿以外にもSATのスコア向上のための指導をしてくれるところはある。そこで、少し前に取材でお世話になった日系の塾に問い合わせてみた。すぐに電話がかかって来て、体験受講をしてみては、とすすめてくれた。SATには数学と英語の科目があるが、ニナは両方とも同じような点数なので、両方を引き上げる必要がある。

まずは英語のSAT対策クラスを受講した。終わった後、ニナは笑顔だった。「先生の教え方が分かりやすい。どうしてもっと早くここのことを教えてくれなかったの?」と言われてしまったほど。ニナによると「先生は日本語も上手だけど英語もネイティブ。とっても親身で雰囲気が良い」とのこと。ここなら本人のやる気が出るのでは、という手応えを得て、夏休みの間と大学願書提出の締め切りまではこの塾に通うことに決めた。

そして通い始めた直後、8月末のSAT実施日にサブジェクトテスト(必須ではないが大学合否の判断材料になるテスト)を受験することにした。そのことを塾に報告すると、「英語は結果が出てきたので、あとはサブジェクトテストに向けてSAT Math Ⅱの対策に切り替えましょう」と提案された。さらにエッセー対策も始める予定だ。この塾はクラス終了後に毎回、講師の先生がその日の進捗について保護者に報告してくれる。強化合宿だったらそれも期待できなかったに違いない。

スタートは遅かったが、楽観的な私は、「もし6月に受けたSATの結果がそこそこ良ければ、塾に通わなかったかもしれない。そうしたら、塾で指導を受ければ伸びたかもしれない可能性を潰していた」と今では思っている。さらに、周囲の先輩ママたちにSATに関してリサーチしてみた。ある母親は「娘は成績が良かったので、SAT対策は必要ないと思っていた。でも実際に受けてみたらスコアが低くて驚いた。SATにはコツがあるらしい」と話していた。同じように話していた人は多い。それも本来ならもっと早くリサーチしておくべきだったのに、私もニナも「SATにはコツがある」ことが分かっていなかった。

ということで、時間はわずかしか残されていないが、日々コツコツ取り組んでいるニナをしっかり見守っていきたい。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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