こどもの言葉の力を磨く!
読書のススメ

こどもの日本語の力を養ううえで、読書はとても重要だ。本特集では、幼児期から始める読み聞かせのコツや小学校期のこどもと本との向き合い方など、親として知っていて欲しい読書教育のポイントを解説する。


幼児期

“何を読むか” ではなく
“これを読みたい” が重要

「この絵本、楽しそう。うちの子に読んでみたいな」。思い立った時が読み合いの初め時です。「読み合い」とは、 “読んであげる” “読んで聞かせる” のではなく、読み手も一緒に楽しんで読み合うということ。選書の際は、お母さんがこどもに読みたいと思う絵本をお選びください。長年人気を誇る絵本シリーズ『ぐりとぐら』(福音館書店)も、夢中に聴き入る子もいれば飽きてしまう子もいます。幼稚園などで読む時とご家庭で読む時の大きな違いは自由度です。本の長さや集中できる時間にこだわらず、こどもの自由な反応を積み重ねてください。園で本を聴くのが楽しいという文化が定着すると、不思議なことに絵本を集中して聴くようになり、対話も弾みます。

『ぐりとぐら』なかがわりえこ・おおむらゆりこ

最近ではウェブサイトで気軽にこどもの本の情報を得ることができ、初めの一歩として便利です。なかでも「絵本ナビ」「東京都立図書館 Tokyo Metropolitan Central Library」は充実しています。2019年度から年度ごとに全国学校図書館協議会絵本委員会が選定している「えほん50」もおすすめです。ウェブサイトによっては読書感想が載っているものや、一部を読むことができるものもあります。お子さんの現在と未来に思いを馳せながら、お子さんに寄り添っているお母さんがみずから選書してみましょう。情報を得たら、可能であれば買う前に本屋さんや図書館に行って実際に絵本を手に取ってご覧ください。近頃は、いろいろな言語の絵本を揃えている図書館も増えています。「絵も言葉の量もちょうど良い。この絵本をこどもと一緒に読みたい」と、手間ひまをかけて選んでほしいと切に思います。

お子さんと一緒に本を購入または借りる時には、お子さんの選択した絵本もぜひ1冊。「また恐竜の絵本なの?」「またそのシリーズ?」は禁句です。

 


生まれたての赤ちゃんに、むしろ赤ちゃんがおなかにいる頃からたくさんの言葉のシャワーを注ぐと、母語の響きに親しみを持つといわれています。ゆっくりはっきり話しかけてくださいね。どの絵本にも、創作者のメッセージがこめられています。そして、絵も言葉も芸術性の高い絵本は育児を応援する力を持っています。こどもに読む前に、まずは下読みをして理解を深めてから心をこめて伝えると、幼いこどもにもしっかり伝わります。「読み聞かせしなくちゃ」という縛りから解放され、お子さんとの読み合いの楽しさを実感することがポイントです。まだ文字は読めないのに、繰り返し読んでもらううちにすっかり主人公になりきって、台詞をはっきり心をこめて表現するようになったという報告も届きます。絵本を介して豊かな日本語のシャワーをたっぷりと浴び、絵本の世界へ入り込む楽しさを経験できたからこそでしょう。

お母さんのくつろいだ声は、こどもには声のスキンシップとなります。無意識のうちにこどもとの信頼関係が築かれ、それを土台にコミュニケーション能力が育まれ、その後の人生のいくつもの試練に立ち向かえる目に見えない力となるでしょう。こどもが文字に興味を持ち始めたら、なぞり読み(指でなぞりながら読み聞かせる)や二人読み(二人で声を合わせて読む)をするのも良いですね。日本語にはひらがなもカタカナも漢字もありますから、この好奇心の芽生えは貴重です。ただし、ひらがなを学習するのは公式には小学校に入学してからですので、就学前に音読教材として絵本を使うことは慎重に。こどもがみずから進んで学んで言葉を自分のものにすることを尊び、それを褒める姿勢を持ちましょう。

楽しい読み合いの後には、ストーリー性のある絵本について感じたことを言葉にしてみましょう。言葉にならない感動や沈黙も余韻として共有できると良いですね。知識豊富な科学絵本なら、ゲームのように5W1Hの問題を出し合って遊ぶのも良いでしょう。この時、使用言語は日本語限定です。いろいろな国の昔話絵本も、多文化理解と歴史理解の初めの一歩になることでしょう。

 

赤ちゃんだって
絵本の大切さが分かる

最近、赤ちゃんの認知能力の発達が驚異的であることが分かってきました。

ある家庭からこんな報告がありました。赤ちゃんにどう扱われても頑丈なハードカバーの『じゃあじゃあびりびり』(偕成社)という絵本を逆さまに持って開いたり閉じたりなめたりしていた赤ちゃんが、1歳近くになり、言葉はまだ出ませんが、繰り返し母親の所にその本を持って来るようになりました。繰り返し読みながら母親は気づきました。四角い小さな絵本は、母親の読む言葉と自分が生活で目にする物や耳にする音とが結びついて、なにやら「楽しさ」が詰まっていると分かったようです。それからは、破られないようにしまっておいたハードカバーではない絵本を手にしても、くちゃくちゃびりびりには扱わないというのです。

絵本には力があります。お母さんご自身が選んだ本でお子さんとの読み合いをお楽しみください。絵本は、日本語での育児を楽しく強力なものにしてくれるでしょう。

『じゃあじゃあびりびり』まついのりこ

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